ラッチマンが古巣オリオールズ戦2発|1900年以降2人目の複数弾を打球速度で検証9月3日(日本時間4日)、ボルチモアのカムデンヤーズで行われたレッドソックス対オリオールズ戦で、8月にオリオールズからレッドソックスへ移籍したアドリー・ラッチマン捕手が、1回と6回にソロ本塁打を放った。今季10号と11号。試合はレッドソックスが6-5で逆転勝ちした。
MLB公式の記録によると、移籍した同じ年に古巣との初対戦で複数本塁打を打った選手は、1900年以降でラッチマンが2人目。1人目は1999年のウィリス・オタニェス(オリオールズからブルージェイズへ移籍)で、27年ぶりの出来事になる。
DiamondStats(ダイヤモンドスタッツ)はこの2本の打球と、移籍前後の打撃内容をMLB公式Statsで集計した。分かったのは、2本目の打球速度103.6マイルは移籍後の最速級であり、低調だった移籍後の打撃がようやく本来の数字に戻り始めたということだ。
1900年以降2人目の記録 27年前のオタニェスと並べる
先例のオタニェスは1999年7月8日、ブルージェイズの一員としてカムデンヤーズで2本塁打3打点を記録し、チームは11-6で勝った。今回のラッチマンと、球場も相手も勝敗も同じである。

| 項目 | ウィリス・オタニェス(1999年) | アドリー・ラッチマン(2026年) |
|---|---|---|
| 移籍 | オリオールズ→ブルージェイズ | オリオールズ→レッドソックス |
| 古巣初対戦の日 | 7月8日 | 9月3日 |
| 球場 | カムデンヤーズ | カムデンヤーズ |
| 本塁打・打点 | 2本・3打点 | 2本・2打点 |
| 試合結果 | 11-6で勝利 | 6-5で勝利 |
| その年の本塁打 | 7本(両球団合計) | 11本(9月3日現在) |
ただし2人の格は大きく違う。オタニェスはMLB通算74試合・7本塁打で終わった控え内野手で、1999年の7本が生涯の全本塁打だ。ラッチマンは2019年ドラフト全体1位、オールスター3回の正捕手で、通算72本塁打(9月3日現在)。「移籍した年に古巣と当たり、しかも初戦で2本」という条件が偶然重ならないと成立しない記録であり、選手の実力だけでは狙えない種類の珍しさである。
2本の打球をStatcastで見る 6回の1本は移籍後2番目の速さ
2本とも相手先発ブランドン・ヤングから、右中間へ運んだ。MLB公式Statcastの計測値は次の通り。
| 打席 | 球種・球速 | カウント | 打球速度 | 打球角度 | 飛距離 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1回・10号 | カーブ 77.3マイル | 1-1 | 94.9マイル | 32度 | 377フィート(約115m) |
| 6回・11号 | シンカー 93.8マイル | 初球 | 103.6マイル | 26度 | 389フィート(約119m) |
1本目は打球速度94.9マイルと強い当たりではなく、右翼のフラッグコートにぎりぎり届いた形。2本目は初球のシンカーを迷わず振り抜き、103.6マイルの打球で6回の反撃の口火を切った。
今季の本塁打11本を打球速度で並べると、103.6マイルは8月18日ダイヤモンドバックス戦の107.0マイルに次ぐ移籍後2番目、今季全体でも4番目に入る(DiamondStats独自集計)。
| 日付 | 相手 | 所属 | 打球速度 | 飛距離 |
|---|---|---|---|---|
| 8月18日 | ダイヤモンドバックス | レッドソックス | 107.0 | 401 |
| 6月5日 | ブルージェイズ | オリオールズ | 103.1 | 404 |
| 5月18日 | レイズ | オリオールズ | 103.0 | 419 |
| 9月3日(11号) | オリオールズ | レッドソックス | 103.6 | 389 |
| 4月24日(2本) | レッドソックス | オリオールズ | 103.4/102.0 | 393/395 |
| 9月3日(10号) | オリオールズ | レッドソックス | 94.9 | 377 |
ヤングは今季24先発で防御率3.42、被本塁打19本の主力右腕で、この日の2本で被本塁打は21本になった。
移籍後16試合の打撃は明らかに落ちていた
この2発が「本来の姿」なのかを確かめるため、オリオールズ在籍時とレッドソックス移籍後の成績を分けて集計した(9月3日現在)。
| 期間 | 試合 | 打率 | 出塁率 | 長打率 | OPS | 本塁打 | 打点 | 平均打球速度 | 強い打球の割合 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| オリオールズ(〜8月3日) | 67 | .251 | .331 | .433 | .764 | 8 | 47 | 89.4マイル | 42.2% |
| レッドソックス(8月11日〜) | 16 | .193 | .270 | .368 | .638 | 3 | 6 | 85.4マイル | 33.3% |
※強い打球の割合=打球速度95マイル以上の割合。MLB公式Statcastの全打球からDiamondStatsが独自集計。
移籍後は打率だけでなく打球の質そのものが落ちていた。平均打球速度で4.0マイル、強い打球の割合で8.9ポイントの低下は、16試合という短い区間を差し引いても大きい。8月14日から16日のパイレーツ3連戦では11打数無安打・7三振と、ボストンの空気に飲まれたような内容だった。
直近10試合(8月18日〜9月3日)は35打数8安打・本塁打3本。この日の2本は、その10試合で唯一の複数安打と並ぶ「上向きの兆し」が出た試合でもある。
同じカードの両チームで複数本塁打 4月24日との対比
もう1つ、今季のラッチマンには珍しいデータがある。4月24日、オリオールズの一員としてカムデンヤーズでレッドソックス戦に出場し、5打数3安打2本塁打6打点。そして9月3日はレッドソックスの一員として、同じ球場でオリオールズから2本。同じ年に同じ対戦カードの両チームで複数本塁打を記録したことになる。報道ではMLB史上初とされるが、DiamondStatsは両試合の記録をMLB公式Statsで確認した。
| 日付 | 所属 | 相手 | 成績 | 本塁打の打球速度 |
|---|---|---|---|---|
| 4月24日 | オリオールズ | レッドソックス | 5打数3安打・2本塁打・6打点 | 103.4/102.0マイル |
| 9月3日 | レッドソックス | オリオールズ | 4打数2安打・2本塁打・2打点 | 94.9/103.6マイル |
今季5度目の複数本塁打試合のうち2度が、このカードで生まれている。
順位への影響 レッドソックスはワイルドカード5.5ゲーム差の余裕
9月3日現在のア・リーグ東地区とワイルドカード争いは次の通り。
| 球団 | 勝敗 | 地区首位との差 | ワイルドカード |
|---|---|---|---|
| レイズ | 83勝57敗 | ― | ― |
| ヤンキース | 80勝60敗 | 3.0 | 圏内(+10.0) |
| レッドソックス | 76勝65敗 | 7.5 | 圏内(+5.5) |
| ブルージェイズ | 70勝71敗 | 13.5 | 0.5差 |
| オリオールズ | 69勝72敗 | 14.5 | 1.5差 |
レッドソックスはトレード期限の8月3日時点で60勝51敗・ワイルドカード圏内4.0ゲームの余裕があり、移籍後は16勝14敗。ラッチマン獲得で急伸したわけではないが、貯金を守ったまま9月に入った。一方のオリオールズは54勝58敗から69勝72敗まで持ち直し、最後の1枠に1.5差まで迫っていたが、この試合を含む3連敗で足踏みしている。売り手として主力捕手を手放した球団が、9月にまだ争っているという構図も、この一戦の見どころだった。
年度別成績 2026年は2年ぶりに長打率.400台へ
| 年 | 所属 | 試合 | 打率 | OPS | 本塁打 | 打点 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 2022 | オリオールズ | 113 | .254 | .807 | 13 | 42 |
| 2023 | オリオールズ | 154 | .277 | .809 | 20 | 80 |
| 2024 | オリオールズ | 148 | .250 | .709 | 19 | 79 |
| 2025 | オリオールズ | 90 | .220 | .673 | 9 | 29 |
| 2026 | 2球団合計 | 83 | .240 | .741 | 11 | 53 |
2025年はOPS.673まで落ちたが、2026年はオリオールズ在籍時に.764まで戻していた。残り約20試合で移籍後の数字をどこまで押し上げられるかが、レッドソックスのポストシーズンの打線を左右する。
DiamondStats編集部の独自視点!
古巣の球場で長い拍手を受け、ビデオトリビュートまで流された直後の初球を右中間へ叩き込む。ドラマとしては出来すぎだが、数字で見ると別の顔がある。移籍後16試合の平均打球速度85.4マイルは、捕手としても物足りない水準で、レッドソックスが5人の若手を差し出して手に入れた打撃ではなかった。この日の103.6マイルは「戻ってきた」のか「古巣相手の一夜限り」なのか。次のカードで平均打球速度が90マイル近くに戻るかどうかを、編集部は追いかけたい。オタニェスは古巣戦の2本のあと、その年に5本を積み上げた。ラッチマンにも同じ流れが来るなら、ワイルドカードの争いは一気にレッドソックス有利に傾く。
まとめ
- 9月3日(日本時間4日)、ラッチマンが移籍後初の古巣オリオールズ戦で2本塁打。1900年以降で2人目、1999年のオタニェス以来27年ぶり
- 6回の11号は打球速度103.6マイルで、移籍後2番目・今季4番目の強い打球
- 移籍後16試合は打率.193・平均打球速度85.4マイルと落ち込んでいた。この2発が回復の始まりかが焦点
- 4月24日は逆の立場でレッドソックスから2本。同じカードの両チームで複数本塁打を記録した
- レッドソックスは76勝65敗でワイルドカード圏内5.5ゲームの余裕(9月3日現在)

移籍が選手の本塁打数をどう変えるかは、日本人野手の10年の推移でも見えてくる。日本人メジャー野手の本塁打、10年で激変|データもあわせて読むと、環境の変化と長打の関係が分かる。レッドソックスの9月の試合は、MLBの各配信サービスでライブ視聴できる。
データはMLB公式StatsとStatcastをDiamondStatsが独自に集計(9月3日現在)。
よくある質問
Q. ラッチマンはいつレッドソックスに移籍した?
2026年8月3日(日本時間4日)、トレード期限直前にオリオールズからレッドソックスへ移籍した。レッドソックスは捕手ジェイク・ロジャースも同時に獲得し、オリオールズには投手アンソニー・エヤンソンら5選手が渡った。
Q. 古巣戦の2本塁打は何が珍しい?
移籍した同じ年に古巣との初対戦で複数本塁打を打った選手は、1900年以降でラッチマンが2人目。1人目は1999年7月8日、オリオールズからブルージェイズへ移った内野手ウィリス・オタニェスで、同じカムデンヤーズで2本を打った。
Q. ラッチマンの2026年の成績は?
9月3日現在、83試合で打率.240・11本塁打・53打点・OPS.741。オリオールズ在籍67試合はOPS.764、レッドソックス移籍後16試合はOPS.638と、移籍後は数字を落としている。
Q. 2本の本塁打の打球速度と飛距離は?
1回の10号はカーブを打って打球速度94.9マイル・飛距離377フィート、6回の11号は初球のシンカーを打って103.6マイル・389フィート。どちらも相手先発ブランドン・ヤングから右中間へ運んだ。
Q. レッドソックスはプレーオフに進める?
9月3日現在76勝65敗で、ア・リーグのワイルドカード圏内に5.5ゲームの余裕がある。地区首位レイズとは7.5ゲーム差。
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文:DiamondStats 分析チーム(MLBデータ分析担当)|データ出典:MLB公式Stats(2026年9月時点)





