9月に入り、両リーグの本拠地チームはいずれも138〜139試合を消化し、残り試合は20台まで減った。新人王争いは打者と投手それぞれに有力候補が並び、まだ決着がついていない。
レギュラーシーズン最終成績(MLB公式Stats)
この欄はレギュラーシーズン終了時点の数字です。本文の分析は公開時点の数字です。
ア・リーグ 野手(WAR順)
| 選手 | 球団 | WAR | 試合 | 打率 | OPS | 本塁打 | 打点 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| ケビン・マクゴニグル | タイガース | 5.4 | 156 | .278 | .806 | 18 | 72 |
| カーター・ジェンセン | ロイヤルズ | 3.7 | 149 | .239 | .790 | 27 | 81 |
| トリスタン・ピーターズ | ホワイトソックス | 3.5 | 156 | .265 | .774 | 12 | 56 |
| 村上 宗隆 | ホワイトソックス | 2.9 | 127 | .207 | .825 | 35 | 77 |
ア・リーグ 投手(WAR順)
| 投手 | 球団 | WAR | 登板 | 投球回 | 勝敗 | 防御率 | 奪三振 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| パーカー・メシック | ガーディアンズ | 4.9 | 32 | 186.1 | 12勝9敗 | 2.56 | 193 |
| ペイトン・トール | レッドソックス | 4.1 | 26 | 148.2 | 9勝6敗 | 3.03 | 171 |
| ワルベルト・ウレーニャ | エンゼルス | 2.6 | 29 | 148.1 | 9勝11敗 | 2.97 | 142 |
ナ・リーグ 野手(WAR順)
| 選手 | 球団 | WAR | 試合 | 打率 | OPS | 本塁打 | 打点 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| JJ・ウェザーホルト | カージナルス | 4.6 | 139 | .242 | .704 | 17 | 51 |
| カーソン・ベンジ | メッツ | 4.3 | 156 | .282 | .776 | 20 | 65 |
| TJ・ラムフィールド | ロッキーズ | 2.5 | 155 | .300 | .843 | 16 | 73 |
| サル・スチュワート | レッズ | 2.0 | 162 | .263 | .787 | 32 | 112 |
ナ・リーグ 投手(WAR順)
| 投手 | 球団 | WAR | 登板 | 投球回 | 勝敗 | 防御率 | 奪三振 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| ノーラン・マクリーン | メッツ | 3.5 | 31 | 179.2 | 12勝10敗 | 3.16 | 194 |
| アンドリュー・アルバレス | ナショナルズ | 2.5 | 25 | 112.2 | 2勝6敗 | 3.43 | 114 |
| ローガン・ヘンダーソン | ブルワーズ | 2.4 | 18 | 98.1 | 11勝3敗 | 2.47 | 110 |
新人の中から、野手・投手それぞれWAR上位3人(同じ数字は全員)を並べ、本塁打とOPS(300打席以上)、防御率(80投球回以上)と奪三振の各1位も必ず載せた。
出典:MLB公式Stats。WAR・FIPはMLB公式Statsの算出値で、ほかの算出元の数字とは異なることがある。
本塁打争いを1つの指標だけで追った前回の分析とは異なり、今回は打率・本塁打・打点・盗塁・防御率・奪三振まで幅を広げ、ア・ナ両リーグの新人王候補を横並びでデータ比較する。残り試合をどう消化すれば最終成績がどう変わるか、そして過去10年の新人王とくらべてどの位置にいるかを見ていく。
なお、打率や打点だけでは打順や本拠地の影響を受けるため、候補を評価する際は、打撃力を球場補正込みで示すwRC+、打撃・走塁・守備・投球を勝利数に換算するWARも確認したい。初心者向けに言い換えると、wRC+は「平均的な打者を100として、その打者がどれだけ多く得点を生み出したか」を表す指標で、120なら平均より20%優れた打撃成績という意味になる。WARは「控えレベルの選手と比べて、チームの勝利を何勝分増やしたか」の目安であり、打者なら打撃だけでなく守備や走塁も評価に入る。
WARは算出元によって値が異なるため、比較時はファングラフス版かベースボール・リファレンス版のどちらかに統一する必要がある。両者は同じ「勝利への総合貢献」を測る指標だが、投手評価や守備評価の計算方法が異なる。たとえば、ある選手がファングラフス版で3.0、ベースボール・リファレンス版で2.5と算出された場合、0.5の差をそのまま実力差とは解釈せず、同じ算出元の選手同士で順位や差を見るのが基本となる。
| WARの見方(例) | ファングラフス版WAR | ベースボール・リファレンス版WAR | 読み方 |
|---|---|---|---|
| ある選手の仮想例 | 3.0 | 2.5 | 算出法による0.5差。どちらかに統一して比較する |
| 比較時の原則 | ファングラフス版同士 | ベースボール・リファレンス版同士 | 異なる算出元の数値を直接順位づけしない |
打者編 現在地をデータで並べる
アメリカン・リーグ
| 選手 | 球団 | 試合 | 打率 | OPS | 本塁打 | 打点 | 得点 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| ケビン・マゴニグル | タイガース | 134 | .274 | .788 | 14 | 58 | 85 |
| 村上宗隆 | ホワイトソックス | 103 | .215 | .847 | 29 | 59 | 72 |
| 岡本和真 | ブルージェイズ | 134 | .229 | .748 | 28 | 78 | 73 |
ナショナル・リーグ
| 選手 | 球団 | 試合 | 打率 | OPS | 本塁打 | 打点 | 得点 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| サル・スチュワート | レッズ | 139 | .268 | .827 | 31 | 105 | 80 |
| JJ・ウェザーホルト | カージナルス | 130 | .242 | .713 | 17 | 48 | 88 |
| カーソン・ベンジ | メッツ | 133 | .276 | .754 | 16 | 54 | 69 |
打点ではスチュワートが新人トップの105打点でMLB全体でも上位につけ、得点はウェザーホルトの88得点がリーグ新人最多。マゴニグルは本塁打こそ14本と少ないが出塁率.374でOPS.788と、パワー型2人とは違う「つながる打線」型の数字を残している。
村上と岡本は本塁打数だけを見ると近いが、OPSは村上が.847、岡本が.748と差がある。OPSは出塁率と長打率を足した指標なので、本塁打数だけでなく、四球による出塁、単打・二塁打・三塁打、本塁打以外の打席結果も反映される。このため「本塁打が1本しか違わないのにOPSには差がある」という状況は矛盾ではない。村上は少ない出場試合で長打を集中して記録している一方、岡本はより多くの試合に出場して本塁打と打点を積み上げているため、率で測るOPSと累積成績では評価が分かれる。
また、OPS自体には球場補正が入っていない。本拠地が本塁打や長打の出やすい環境か、投手有利の環境かを含めて比べるにはwRC+が適している。ただし、wRC+は打撃だけの指標で守備・走塁を含まないため、最終的な総合評価ではWARと併用する必要がある。
この比較で重要なのは、村上が103試合でOPS.847、29本塁打を記録している点だ。出場数が少ないため累積型のWARでは不利になり得る一方、1打席当たりの攻撃力を測るwRC+では評価が上がる可能性がある。逆にマゴニグルは出塁と得点、スチュワートは長打と打点に強みがあり、守備位置や走塁を含むWARでどこまで価値を積み上げたかが投票の分岐点になる。打点は走者の数、得点は後続打者にも左右されるため、個人の打撃力だけを示す指標ではない。
投手編 防御率と奪三振で比較する
| 投手 | 球団 | 登板 | 投球回 | 勝敗 | 防御率 | 奪三振 | WHIP |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| パーカー・メシック | ガーディアンズ | 27 | 161.0 | 11勝8敗 | 2.46 | 161 | 1.02 |
| フォスター・グリフィン | ガーディアンズ | 27 | 154.1 | 15勝4敗 | 3.21 | 139 | 1.12 |
| ノーラン・マクリーン | メッツ | 27 | 155.2 | 10勝8敗 | 3.06 | 172 | 1.12 |
同じガーディアンズの新人2人が防御率と勝ち星でそれぞれ首位に立つ構図。マクリーンは奪三振172でメシック・グリフィンを上回り、防御率3点台ながら三振で存在感を出している。
投手WARでは、勝敗よりも投球回、奪三振、与四球、本塁打、失点抑止などが重視される。援護点や救援投手の影響を受ける勝利数だけならグリフィン、失点を抑えた結果ならメシック、打球に左右されにくい奪三振能力ならマクリーンが優位だ。したがって、現時点で最もバランスよく見えるのは防御率2.46、161回、161奪三振のメシック。マクリーンは奪三振とWAR系指標で差を詰められる余地があり、グリフィンは勝利数以外の内容が投票でどこまで評価されるかが焦点になる。
投手のファングラフス版WARは奪三振・与四球・被本塁打など投手が比較的コントロールしやすい結果を重視し、ベースボール・リファレンス版WARは実際に許した失点を守備や球場環境などで補正して評価する。このため、三振が多いマクリーンはファングラフス版、実際の失点を強く抑えているメシックはベースボール・リファレンス版で相対的に評価されやすい可能性がある。ただし、どちらか一方が常に正しいという意味ではなく、異なる角度から投球価値を測っている。
詳しくはメシック7回8奪三振、村上に被弾も好投|球種別データ徹底検証でまとめています。
残り試合を計算式で伸ばすと(ダイヤモンドスタッツ調べ)
計算式は次の通り。
予測最終値 = 今の数字 +(今の数字 ÷ 出場試合数)× チームの残り試合数
投手は先発間隔を5日と仮定し、残り登板数=チームの残り試合数÷5で概算した。このペースで最後まで行った場合の着地点は以下の通り。
| 選手 | 現在 | このペースなら(162試合終了時点) |
|---|---|---|
| マゴニグル(本塁打) | 14本 | 約17本 |
| 村上宗隆(本塁打) | 29本 | 約36本 |
| 岡本和真(本塁打) | 28本 | 約33本 |
| スチュワート(打点) | 105打点 | 約122打点 |
| ウェザーホルト(盗塁) | 14個 | 約17個 |
| グリフィン(勝利) | 15勝 | 約18勝 |
| マクリーン(奪三振) | 172個 | 約201個 |
あくまで残り試合を今のペースのまま単純に伸ばした「このペースなら」の数字であり、確定した成績ではない。
この計算には、対戦投手・対戦打線の強さ、本拠地と遠征の比率、左右の相性、休養日、登板間隔、球数制限、疲労や故障による欠場は反映していない。とくに村上のように出場試合数が他候補より少ない選手は、短期間の好不調が予測値を動かしやすい。投手も終盤に登板間隔の調整や投球回制限が入れば、勝利数や奪三振は単純計算ほど伸びない可能性がある。予測値は順位の断定ではなく、現在のペースを比較する目安として見るべきだ。
過去10年の新人王とくらべる
同じ条件(2016〜2025年、162試合制のみで比較。2020年は60試合の短縮シーズンのため参考扱い)で歴代の新人王の主要数字を並べると、次のようになる。
| 年 | ア・リーグ新人王 | ナ・リーグ新人王 |
|---|---|---|
| 2025 | カーツ 36本 86打点(117試合) | ボールドウィン 19本 |
| 2024 | ヒル 15勝7敗 防御率3.50 | スキーンズ 11勝3敗 防御率1.96 170奪三振 |
| 2023 | ヘンダーソン 28本 82打点 | キャロル 25本 76打点 |
| 2022 | ロドリゲス 28本 | ハリス二世 19本 64打点 |
| 2021 | アロザレーナ 20本 | インディア 21本 |
| 2019 | アルバレス 27本 78打点 | アロンゾ 53本 120打点(新人記録) |
| 2017 | ジャッジ 52本 114打点(新人記録) | ベリンジャー 39本 97打点 |
| 2016 | フルマー 防御率3.06 | シーガー 26本 |
これと比べると、スチュワートの予測122打点は2019年のアロンゾ(120打点)以来の高水準になる可能性がある。マクリーンの予測201奪三振は2024年のスキーンズ(170個)を上回るペース。一方でグリフィンの予測18勝は、直近10年のどの新人王投手よりも多い勝ち星になる計算だ。
ただし、異なる年度のWARやwRC+は、その年の得点環境と球場補正を含むため、単純な本塁打数や打点より比較に向いている一方、算出方法の違いには注意が必要だ。また、打者と投手をまたいで比較する場合、守備位置の希少性、走塁、投球回といった質の異なる貢献を同じ尺度に置けるWARが有効だが、WARだけで受賞者が決まるわけではない。
本文の当季成績は9月2日時点のMLB公式の統計データ、歴代受賞者と記録はMLB公式の新人王受賞者一覧、指標の定義はファングラフスの指標解説、投票制度は全米野球記者協会の投票に関する案内を参照した。予測値は記載した式によるダイヤモンドスタッツの独自計算で、端数は概算している。
決着はいつ 残り試合数から見る
9月2日時点でレッズ・ブルージェイズ・メッツは残り23試合、ホワイトソックス・タイガース・ガーディアンズ・カージナルスは残り24試合。9月末までに各チームが162試合を消化し、レギュラーシーズンの最終成績はそこで確定する。
新人王の正式発表は例年、ワールドシリーズ閉幕後の11月中旬。全米野球記者協会の投票はポストシーズン開始前に締め切られるため、最終的な数字が固まってから発表までさらに1カ月ほどの期間がある。
よくある質問
Q. 2026年のMLB新人王争いはどちらのリーグが接戦ですか

打点・盗塁・防御率・奪三振と指標がリーグごとに割れており、現時点では単独候補に絞り切れていない。残り20試合台の数字次第で順位が動く可能性がある。
打者ではスチュワートの長打と打点、村上の出場試合当たりの長打力、マゴニグルの出塁力が比較点になる。投手ではメシックの防御率と投球回、グリフィンの勝利数、マクリーンの奪三振が競合している。最後はこれらの主要成績に加え、WAR、wRC+、守備、走塁、チームへの貢献をどう評価するかで票が分かれそうだ。
Q. MLBの新人王の資格条件は何ですか
MLB公式の新人資格では、シーズン開始前までのメジャー通算成績が130打数、投手は50投球回を超えておらず、かつメジャーのアクティブロースター登録が通算45日を超えていないことが基準となる。いずれかを過去に超えた選手は新人資格を失う。
ここでいう「新人」はプロ野球選手としての新人ではなく、あくまでMLBでの出場歴が基準内にある選手を指す。したがって、NPBで長い一軍経験を持つ選手がMLBでは新人王候補になることがあり、日本の読者が受ける「実績豊富な選手なのに新人なのか」という違和感は、日米で数えるキャリアの範囲が異なるために生じる。
この基準が対象にするのはMLBでの打数・投球回・登録日数であり、NPBでの一軍実績そのものは新人資格を失う条件に含まれない。イチローや佐々木主浩がMLB移籍初年に新人王を受賞したのも同じ考え方による。このため、村上宗隆と岡本和真もNPBでの実績だけを理由に新人王の対象外にはならず、シーズン開始前のMLB通算実績が基準内であれば候補になり得る。つまり、両選手を「野球選手としての新人」と位置づけているのではなく、「MLB規定上の新人資格を持つ選手」として扱っている。なお、NPBでの年数が影響するプロスペクト・プロモーション・インセンティブ(PPI)の資格は、新人王資格とは別制度である。
Q. 新人王はいつ発表されますか
シーズン終了後、ワールドシリーズが閉幕した後の11月中旬に全米野球記者協会が発表するのが例年の流れ。投票はポストシーズン開始前に行われ、各リーグの投票者が1位から3位までを記入し、5点・3点・1点の加重方式で集計される。
Q. 過去10年で本塁打数が新人王選出に大きく影響した年はありますか
2019年のピート・アロンゾ(53本)、2017年のアーロン・ジャッジ(52本)はいずれも新人本塁打記録を更新しており、本塁打が選出理由として大きな比重を占めた年だった。
まとめ
現時点で打者の軸は、31本塁打、105打点を積み上げたスチュワート。村上は103試合で29本塁打、OPS.847という密度の高い打撃で追い、マゴニグルは出塁率.374と得点力に守備・走塁の上積みがあれば総合評価で対抗できる。打点だけで決めず、wRC+とWARを同じ算出元で比べることが必要になる。
観戦時は、wRC+を「球場差をならした打撃力」、WARを「打撃以外も含めた総合貢献」と捉えると分かりやすい。村上と岡本のように本塁打数が近くてもOPSに差がある場合は、四球を含む出塁内容と本塁打以外の長打を確認し、そのうえで球場補正込みのwRC+を見ると評価の理由を追いやすい。
投手では、防御率2.46、161投球回、161奪三振をそろえたメシックを現段階の最有力と見る。グリフィンの勝ち星とマクリーンの奪三振には明確な訴求力があるが、投票では援護や守備の影響を切り分け、投球内容とWARまで確認したい。残り試合で注目すべきなのは、派手な積み上げ記録だけでなく、打者なら守備・走塁を含む総合貢献、投手なら投球回を維持しながら失点と四球を抑えられるかだ。
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文:DiamondStats 分析チーム(MLBデータ分析担当)|データ出典:MLB公式Stats(2026年9月時点)





