この記事で分かること
フリーマンが36試合HRゼロのまま打率.349を維持している矛盾を、StatcastのEV(打球初速)・LA(打球角度)・xSLG(期待長打率)の3指標で解剖する。打球の「強さ」と「角度」のどちらに変化が生じているかを読み解く。
2026年8月20日現在、ドジャースのフレディ・フリーマンはオールスター明けから36試合連続で本塁打がゼロだ。この期間の打率は.349と高水準を維持しており、凡打が続いているわけではない。「本塁打だけが消えた」という奇妙な状態が36試合にわたって続いている(打率・本塁打数はいずれもMLB公式Statsの実測値)。
打てているのに本塁打が出ない——なぜか。MLB公式サイトのStatcast(打球計測データ)を軸に、フリーマンの打球に何が起きているかを分解していく。
詳しくは7月10日 MLB日本人選手 成績まとめ|鈴木 誠也1本塁打でまとめています。
フリーマンの「打率.349 × HR36試合なし」はどこまで特殊か
本塁打が出ない原因は大きく2つに分かれる。①打球の質(初速)が落ちているか、②打球の角度や方向が変わっているかだ。

まず、議論の出発点となる確定済みの実測値を押さえておく。上の成績推移グラフの数字を表にすると次の通りだ。
| 指標(2026オールスター後〜8/20) | 実測値 | 出典 |
|---|---|---|
| 連続本塁打なし | 36試合 | MLB公式Stats |
| 打率 | .349 | MLB公式Stats |
| 本塁打 | 0本 | MLB公式Stats |
36試合はおよそ5〜6週間分にあたり、主力の一塁手としては長い部類に入る空白だ。打率.349という数字は、バットがボールをしっかり捉えられていることを示す。フリーマンの問題は「コンタクト不足」ではない。バットは当たっている。通常これだけ長く本塁打が出ない打者は打率も大きく落ちるのが一般的で、その意味で「打率.349 × 36試合HRゼロ」という組み合わせは、実測値の時点で「打球の質は保たれている」ことを物語っている。それでも本塁打が出ないとすれば、本塁打に必要な条件——打球初速と打球角度の組み合わせ——のどちらかが崩れているはずだ。
フリーマンはキャリアを通じて広角打法を得意とする左打者だ。引っ張りと逆方向の両方に長打を飛ばせる。ただし「全方向に長打」というスタイルと、本塁打特有の条件(強い引っ張り方向+適切な角度)は必ずしも重ならない点が、今回のカギになる。逆方向へのライナーが増えるほど安打は積み上がるが本塁打は減る——この構造こそ、フリーマン個人の現状に固有の説明軸だ。
なお本稿は、本塁打消失の要因をEV・LA・xSLGの3指標に絞って読み解く。守備・走塁や対戦投手別の傾向、年齢・契約といった要因までは扱わない。
Statcast EV(打球初速):打球の強さは落ちていないか
StatcastはMLBが全球場に導入した公式の打球計測システムで、その生データはMLB公式Statsで一般に公開されている。本稿の指標はいずれもこの一次データに基づく。
EV(打球初速)は、バットとボールの接触の力強さを測る指標だ。MLB全体の平均はおよそ時速88〜90マイル前後で推移しており、本塁打が出やすい打球は95マイル以上、100マイルを超えると本塁打確率が急激に上がる(数値基準はいずれもMLB公式のStatcast公開データによる)。
打率.349を保っているということは、EVが大きく落ちている可能性は低い。バットの芯に当てられているからこそ、これだけの高打率が成立する。
注目すべきは「95マイル以上のハードヒット比率」の推移だ。この比率が前半戦から下がっているなら打球の「力」が落ちている。変わっていないなら、問題は力ではなく角度にある。上の成績推移グラフで打率が高止まりしている以上、力そのものの大幅低下は考えにくく、現在の公式記録上でこのハードヒット比率を前半戦と照合することが、最初の手がかりになる。
Statcast LA(打球角度):本塁打が消える角度のロジック
LA(打球角度)は、本塁打と内野ゴロを分ける最重要指標だ。MLB公式Stats(MLB公式のStatcast公開サイト)の分析では、本塁打が最も出やすい打球角度はおおむね20〜35度とされている。
| 打球角度(度) | 典型的な結果 |
|---|---|
| 10度未満 | ゴロ(アウトになりやすい) |
| 10〜20度 | ライナー(ヒットになるが本塁打は少ない) |
| 20〜35度 | 本塁打のスイートゾーン |
| 35度超 | 高いフライ(飛距離が出ずアウトになりやすい) |
出典:Statcast(MLB公式のMLB公式Stats)の公開データより区分
打率.349と「本塁打ゼロ」を同時に説明する最もシンプルなシナリオが、この角度の問題だ。平均打球角度がライナーゾーン(10〜20度)に偏っていれば、ヒットは量産できても本塁打はほぼ出ない。確定している実測値(打率.349・HR0)と、この角度の理屈はきれいに整合する。
フリーマンはキャリアの序盤、ライナーで塁間を打ち抜く「接触型打者」だった。後にフライ打球の割合を意図的に増やし、2020年NL MVP受賞時には本塁打数が増加した経緯がある(打率.341はベースボール・リファレンスによる)。その打球角度の調整が後半戦に入って一時的に前の傾向へ戻っているとすれば、現在の高打率・HR無しをよく説明できる。
xSLG(期待長打率):フリーマンの潜在的な長打力はどこにあるか
xSLG(期待長打率)は、個々の打球のEVとLAから「本来出るべき長打率」を算出するStatcastの指標だ。実際の長打率より客観的に打球の質を測れるため、好不調の「実力値」として分析に使われる。
| xSLGと実際のSLGの関係 | 意味 |
|---|---|
| xSLG > 実際のSLG | 打球の質は高いが結果が伴っていない(好転の余地あり) |
| xSLG ≒ 実際のSLG | 打球の質どおりの成績 |
| xSLG < 実際のSLG | 打球の質より成績が良い(ラッキーな状態) |
出典:xSLGの定義はMLB公式のStatcast(MLB公式Stats)による
36試合HRなしの期間にフリーマンのxSLGが高水準を保っているなら、本塁打は「出ていないが出るはずの状態」——確率論的な遅延だ。逆にxSLGが実際の長打率と連動して低下しているなら、打球の質自体が変化していることを示す。
打率.349という確定実測値は前者(質は高い=xSLGも高いはず)を支持する材料であり、MLB公式StatsでxSLGの推移を前半戦と照合することが、今後の反発を予測する上で最も重要なポイントになる。
キャリアデータから見る「36試合の空白」の意味
フリーマンは2011年のMLBデビュー以来、高打率と長打を兼ね備えた一塁手として実績を積み上げた。2020年NL MVPを.341打率で受賞し、ドジャース移籍後もリーグを代表する左の強打者として機能してきた(成績はベースボール・リファレンス/MLB公式Stats)。
「強打者が長い本塁打の空白期間を経験すること」自体は珍しくない。重要なのは、その空白が意図的な打撃調整の結果なのか、打球の質の低下なのかだ。高い打率は、少なくともコンタクトの質が落ちていないことを示している。
36試合の空白の中でStatcastが示すEV・LA・xSLGを前半戦と比較すれば、フリーマンが本塁打を「失った」のか「保留している」のかが見えてくる。読者が次に確認すべきは、MLB公式Statsのフリーマンのページで「前半戦→後半戦でLAだけが下振れしているか」の一点だ。
「.349 × 36試合HRゼロ」の組み合わせが面白いのは、これが「悪い不振」ではなく「成功の形が変わった不振」に見える点だ。
本塁打が36試合出ない打者は通常、打率も落ちる。打球の質が落ちているからだ。ところがフリーマンは打率を高い水準で保ちながら本塁打だけを失っている。確定している実測値(打率.349・HR0)をStatcastの観点から読み解くと、「質の問題」ではなく「角度・方向の問題」である可能性が高い。広角に打ち返すフリーマン本来のスタイルが、逆方向ライナーへ寄ることで安打は増え本塁打だけが消える——という彼固有のメカニズムが、この36試合に最も当てはまる仮説だ。
ドジャースのクリーンアップとして大谷翔平らと組む中で、フリーマンに「出塁を最優先せよ」という打撃戦略の変化が加わっているとしたら、打率上昇・本塁打減少は意図的な調整の結果かもしれない。チームとしては合理的な判断だが、フリーマン個人の本塁打ペースへの影響は無視できない。
観戦時のコツも一つ挙げておきたい。数字を追わなくても、中継で打球の上がり方(鋭いライナーか、山なりのフライか)に注目すれば、角度が戻り始めた兆候はその場でつかめる。ポストシーズンに向け、大舞台で勝負強さを発揮してきた歴史を持つフリーマンが、終盤戦でどこまでHRペースを取り戻せるか。判断材料はシンプルで、MLB公式StatsのLAが20〜35度のスイートゾーンへ戻り始めた時が反発の合図になる。ドジャース打線全体のデータ傾向はドジャース6連敗の正体をデータ分解でも継続して追っている。
まとめ
- 2026年8月20日現在、フリーマンはオールスター後36試合連続HR無しで打率.349を維持(実測値・MLB公式Stats)
- 打率の高さからコンタクトの問題ではなく、本塁打に必要なEV(打球初速)またはLA(打球角度)の変化が疑われる
- 確定実測値(.349・HR0)は「質は高いが角度・方向がずれている」というシナリオと最も整合する
- xSLG(MLB公式Stats)が前半戦と変わらず高水準であれば、確率論的に本塁打が出る時期は近い
- ポストシーズンを見据えた後半戦終盤で、LAがスイートゾーンへ戻りHRペースが回復するかが最大の注目点
関連記事:スクーバル ドジャース合流|大谷との初共演をデータで見る
よくある質問
Q. フリーマンはなぜ36試合も本塁打が出ないのか?

上のグラフ(MLB公式Statsの実測値)の通り、直近でも安打は途切れず本塁打だけがゼロで推移している。打率.349を維持していることからコンタクト自体は保たれている。Statcastの打球角度(LA)が本塁打のスイートゾーン(20〜35度)から外れ、ライナーゾーン(10〜20度)に偏っていることが主な原因として疑われる。意図的な打撃アプローチの変更、または投手側の対策が絡んでいる可能性がある。
Q. xSLGとは何ですか?
xSLG(期待長打率)は、打球のEV(初速)とLA(角度)から「本来出るべき長打率」を算出するStatcast(MLB公式Stats)の指標。実際の長打率より客観的に打球の質を測れるため、好不調の実力値として使われる。xSLGが実際のSLGより高ければ、近く成績に反映される可能性を示す。
Q. フリーマンのHR不振はいつまで続くか?
MLB公式StatsのxSLGが前半戦と同水準を維持しているなら、確率論的に近いうちに本塁打は出る状態にある。打率.349が示す通り打球の質は落ちていないため、角度の問題が解消されれば本塁打は戻ってくる可能性が高い。
Q. ドジャースの他の選手のデータはどこで見られますか?
DiamondStatsでは山本由伸の12勝目を歴代ドジャース日本人投手と比較など、ドジャース関連のデータ記事を随時掲載している。
⚾ 試合を観るには: MLB配信サービスの比較・視聴方法はこちら





