9月に入ったア・リーグの投手部門は、防御率2点台の投手が5人もひしめく異例の混戦になっている。ダイヤモンドスタッツ調べでは、9月1日時点で防御率・FIP・奪三振のどれを見ても抜け出た1人がいない。同時期に公開したMVPレース記事(WAR・OPS・打点)とは違い、こちらは投手の記録だけを並べて誰が最有力かをデータで見ていく。
レギュラーシーズン最終成績(MLB公式Stats)
この欄はレギュラーシーズン終了時点の数字です。本文の分析は公開時点の数字です。
| 投手 | 球団 | 勝敗 | 防御率 | FIP | 投球回 | 奪三振 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| キャム・シュリットラー | ヤンキース | 14勝6敗 | 1.95 | 2.56 | 193.2 | 239 |
| ディラン・シーズ | ブルージェイズ | 11勝6敗 | 2.40 | 2.56 | 169.0 | 239 |
| パーカー・メシック | ガーディアンズ | 12勝9敗 | 2.56 | 3.07 | 186.1 | 193 |
| ドリュー・ラスムッセン | レイズ | 16勝5敗 | 2.67 | 2.82 | 172.0 | 174 |
| ソニー・グレイ | レッドソックス | 18勝5敗 | 2.72 | 3.47 | 169.0 | 149 |
奪三振の上位: ギャビン・ウィリアムズ(ガーディアンズ) 248個、ディラン・シーズ(ブルージェイズ) 239個、キャム・シュリットラー(ヤンキース) 239個
出典:MLB公式Stats。WAR・FIPはMLB公式Statsの算出値で、ほかの算出元の数字とは異なることがある。
9月1日時点の防御率・FIP・奪三振
MLB公式の成績データの勝敗、防御率、投球回、奪三振と、ファングラフスのFIPをもとに、9月1日時点で規定投球回に達している上位5投手を並べた。規定投球回は、その時点で各球団が消化した試合数と同じイニング数が基準となる。
| 投手 | 球団 | 成績 | 防御率 | FIP | 投球回 | 奪三振 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| ディラン・シース | トロント | 9勝5敗 | 2.33 | 2.42 | 150.1 | 217 |
| カム・シュリットラー | ヤンキース | 12勝6敗 | 2.09 | 2.62 | 163.2 | 201 |
| ゲイビン・ウィリアムズ | クリーブランド | 13勝7敗 | 3.81 | 3.57 | 163.0 | 217 |
| パーカー・メシック | クリーブランド | 11勝8敗 | 2.46 | 3.05 | 161.0 | 161 |
| ドリュー・ラスムッセン | タンパベイ | 14勝5敗 | 2.95 | 2.90 | 146.1 | 149 |
防御率だけならシュリットラーの2.09が最も低いが、奪三振はシースとウィリアムズが217個で並ぶ。FIPで見るとシースが2.42でこのグループの中では最も安定した数字を残している。クリーブランドはウィリアムズとメシックの2人が同時に上位に入っており、球団としての投手陣の厚みも目立つ。
WARも加えると、ファングラフスの9月1日時点のWARではシュリットラーが5.1、シースが5.0で僅差となっている。ファングラフスのWARはFIPを基礎に投手の貢献度を勝利数へ換算するため、投球回の多いシュリットラーと、奪三振・FIPで優位に立つシースの差が小さいことを示す。ただし、WARは算出元によって守備や失点の扱いが異なるため、単独で優劣を決める数字ではない。
このペースで最後まで行くとどうなるか(ダイヤモンドスタッツ調べ)
9月1日時点でトロントは139試合を消化し68勝71敗。ア・リーグ各球団もおおむね同じ試合数を消化しているため、これを基準に最終ペースを計算した。
計算式: 最終ペース = 現在の投球回・奪三振 ×(162 ÷ 9月1日時点の消化試合数139)
| 投手 | 投球回ペース | 奪三振ペース |
|---|---|---|
| シース | 175.1回 | 253個 |
| シュリットラー | 190.2回 | 234個 |
| ウィリアムズ | 190.0回 | 253個 |
| メシック | 187.2回 | 188個 |
| ラスムッセン | 170.2回 | 174個 |
このペースを保てば防御率・FIPの数値そのものは変わらないが、162試合制におけるシーズン終了時の規定投球回は、各球団の予定試合数と同じ162回になる。シュリットラーとウィリアムズは既に162回を上回り、シースも残り試合で到達する見通しだ。奪三振はシースとウィリアムズが250個台に乗る計算で、ここでも2人の争いが軸になりそうだ。
過去10年のサイ・ヤング受賞投手と比べると
現在の上位陣の数字が歴代の受賞投手と比べてどの水準にあるかを見る。受賞者と勝敗、防御率、奪三振、投球回はMLB公式の成績データおよびベースボール・リファレンスの各年成績を照合した。
| 年 | 受賞投手 | 球団 | 防御率 | 奪三振 | 投球回 |
|---|---|---|---|---|---|
| 2016 | ポルセロ | ボストン | 3.15 | 172 | 189.0 |
| 2017 | クルーバー | クリーブランド | 2.25 | 265 | 203.2 |
| 2018 | スネル | タンパベイ | 1.89 | 221 | 180.2 |
| 2019 | バーランダー | ヒューストン | 2.58 | 300 | 223.0 |
| 2020 | ビーバー | クリーブランド | 1.63 | 122 | 77.1 |
| 2021 | レイ | トロント | 2.84 | 248 | 193.1 |
| 2022 | バーランダー | ヒューストン | 1.75 | 185 | 175.0 |
| 2023 | コール | ヤンキース | 2.63 | 222 | 209.0 |
| 2024 | スクーバル | デトロイト | 2.39 | 228 | 192.0 |
| 2025 | スクーバル | デトロイト | 2.21 | 241 | 195.1 |
シースの現在の防御率2.33はこの10年の受賞ラインと比べても十分に競える数字だが、投球回はまだ150.1回と歴代の受賞投手より少ない。奪三振ペース(253個)は歴代上位に匹敵する水準になる計算だ。
FIPはファングラフスで2020年以降を確認した。ビーバー(2020年)2.06、レイ(2021年)3.68、バーランダー(2022年)2.48、コール(2023年)3.16、スクーバル(2024年)2.49、スクーバル(2025年)2.44。シースの現在のFIP2.42はこの6年で最も低かったビーバーの2.06に次ぐ水準で、直近の受賞投手2人よりも低い。
決着はいつごろつきそうか
9月1日時点でトロントの残り試合は23。先発ローテーションは中5日が基準になるため、シーズン終了(9月27日)までシースやウィリアムズが投げられるのはあと4〜5試合程度とみられる。
防御率はシュリットラー、奪三振はシースとウィリアムズが並び、FIPはシースが最も低いというように指標ごとに首位が割れているのが今のア・リーグの特徴だ。残り試合が1桁に近づく9月中旬から終盤にかけて、1試合の出来・不出来で防御率やFIPの順位が入れ替わる可能性が高く、最終盤までもつれる見通しになる。
まとめ
9月1日時点のア・リーグ投手部門は、防御率・FIP・奪三振のどれを主軸に見るかで最有力候補が変わる混戦になっている。このペースなら奪三振はシースとウィリアムズが250個台に乗る計算で、この2人を軸に残り4〜5試合の投球内容が最終的な評価を左右しそうだ。WARではシュリットラーとシースが僅差にあり、投球回の差と、奪三振・FIPの優位を投票者がどう評価するかも焦点になる。ダイヤモンドスタッツでは今後も各投手の登板ごとに数字を追跡していく。中継を見る際は、登板日程と合わせてこの表の数字を確認してみてほしい。
あわせてナ・リーグ サイ・ヤング賞は誰か 防御率・FIP・奪三振で比べるもご覧ください。
よくある質問
防御率だけでは見えにくい今回の混戦を読むため、数字を比べる際に押さえておきたい点を整理する。
Q. 現時点でア・リーグの防御率トップは誰か
2026年9月1日時点でカム・シュリットラー(ヤンキース)の2.09が最も低い。ただし奪三振やFIPでは別の投手が上回っており、単一の指標だけでは首位を決めにくい状況だ。

Q. サイ・ヤング賞はいつ発表されるか
MLBのサイ・ヤング賞は例年、ワールドシリーズ終了後の11月中旬に発表される。2026年シーズンの受賞者も同様の時期に発表される見通しだ。
Q. 防御率とFIPの違いは何か
防御率は自責点を投球回で換算した指標で、味方守備や打球結果の影響も受ける。FIPは投手が直接関与する奪三振、与四球、死球、被本塁打を使い、リーグの防御率水準に合わせる定数を加えて算出する。守備の影響を抑えて投手の責任範囲を評価できる一方、打球管理や走者を残さない能力のすべてを表す指標ではない。
Q. 奪三振の数はサイ・ヤング賞の選考にどれくらい関係するか
奪三振だけで賞が決まるわけではないが、防御率やFIPが近い投手同士を比べる際に、奪三振の多さが評価の差になりやすい。今季のア・リーグでも防御率が僅差の投手が複数おり、奪三振の行方が注目されている。
Q. 規定投球回に届かない投手はサイ・ヤング賞の対象になるか
規定投球回に届かなくてもサイ・ヤング賞の対象にはなる。投票資格に最低投球回の条件はなく、規定投球回は主に防御率などの公式ランキングへ掲載するための基準だ。MLB公式記録規則では、投手の規定投球回を各球団の予定試合数と同じイニング数と定めているため、162試合制では162回となる。打者の首位打者争いにある不足打席を加算する救済規定は、投手の防御率順位には適用されない。
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文:DiamondStats 分析チーム(MLBデータ分析担当)|データ出典:MLB公式Stats(2026年9月時点)





