2023年開幕からのMLB通算防御率ランキングを、ロサンゼルスの地元放送局が番組内で紹介し、その「トップ5の顔ぶれ」がSNSで話題になっている。エースと目される大物が上位に見当たらず、意外な名前が並ぶ——という驚きだ。DiamondStatsはこのランキングをMLB公式Statsで一から集計し直し、さらに運の影響を切り離したFIPで「真のトップ5」を出し直した。
先に結論から言い切る。2026年8月13日時点、2023年開幕からの通算防御率トップ5は、1位タリク・スクーバル2.49/2位ポール・スキーンズ2.53/3位山本由伸2.66/4位クリス・セール2.76/5位クリストファー・サンチェス2.89(いずれも2023年以降の通算350投球回以上・ダイヤモンドスタッツ調べ)。日本人の山本由伸が全体3位に食い込んでいるのが、まず大きなポイントだ。
2023年以降の通算防御率トップ5(公式データで集計)
対象は「2023年開幕〜2026年8月13日時点で、この期間に通算350投球回以上を投げた投手」。母集団の作り方は結果を見る前に決めた基準で、他の記事でも同じ物差しを使う。

| 順位 | 投手 | 通算防御率 | 投球回 | WHIP | 奪三振 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1 | タリク・スクーバル | 2.49 | 約575回 | 0.91 | 699 |
| 2 | ポール・スキーンズ | 2.53 | 約455回 | 1.00 | 552 |
| 3 | 山本由伸 | 2.66 | 約403回 | 0.98 | 433 |
| 4 | クリス・セール | 2.76 | 約529回 | 1.05 | 666 |
| 5 | クリストファー・サンチェス | 2.89 | 約639回 | 1.14 | 642 |
「まさか」と言われる理由は、6位以下に大物が並ぶからだ。防御率2.95のマックス・フリード、2.96のザック・ウィーラー(7位)、2.97のゲリット・コール(8位)が、わずかな差でトップ5圏外。年俸も知名度もトップ級の投手が5位内に入れず、代わりにフィリーズの技巧派サンチェスが滑り込む——この地味な顔ぶれこそが話題の正体だ。
なお、防御率(ERA)の定義や見方があいまいな方は、MLBで使われる野球用語の完全解説もあわせてどうぞ。
FIPで再評価する「真のトップ5」
防御率は「実際に何点取られたか」の指標で、味方の守備・打球の運・走者を背負ったときの巡り合わせに大きく左右される。そこで投手本人が完全にコントロールできる本塁打・四死球・奪三振だけで失点を評価し、守備と運を切り離したのがFIPだ。数字は防御率と同じスケールで読める(低いほど良い)。本記事のFIPは、対象母集団の平均が実際の平均防御率(3.95)に一致するよう定数を独自算出している(ダイヤモンドスタッツ調べ)。
運を除いたFIPで並べ替えた「真のトップ5」がこちら。
| FIP順位 | 投手 | 防御率 | FIP | 差(ERA−FIP) |
|---|---|---|---|---|
| 1 | タリク・スクーバル | 2.49 | 2.40 | +0.09 |
| 2 | ポール・スキーンズ | 2.53 | 2.53 | ±0.00 |
| 3 | クリス・セール | 2.76 | 2.56 | +0.20 |
| 4 | ギャレット・クロシェット | 3.00 | 2.74 | +0.26 |
| 5 | クリストファー・サンチェス | 2.89 | 2.85 | +0.04 |
ここで景色が変わる。防御率で見えなかったギャレット・クロシェット(防御率3.00=10位圏)がFIPでは4位へ急上昇する。奪三振から四球を引いたK-BB%は27.3%とトップ級で、「運に恵まれず数字が実力より悪く出ていた投手」の典型だ。逆にスクーバルとスキーンズは防御率とFIPがほぼ一致し、内容と結果が完全に噛み合っている。この2人が本物である裏付けと言える。
山本由伸の「3位」を、DiamondStatsはこう見る
日本人ファンが一番気になるのはここだろう。山本由伸は防御率2.66で堂々の全体3位。だがFIPで並べ直すと、その順位は3.00で全体8位まで下がる。防御率とFIPの差はマイナス0.34で、トップ15の中でも際立って大きい。
これは「実力がない」という話では決してない。防御率が実力(FIP)以上に良く出ているということは、ドジャースの堅い守備、走者を背負ってからの粘り、失点圏での要所の締めが効いている証拠でもある。事実、山本の45打者連続アウトという歴代2位級の投球や、無四球完投での2年連続10勝は、まさに「点を与えない試合運び」の賜物だ。
一方で本塁打を36本浴びている点は、FIPを押し上げた主因。「与えた本塁打と四球をもう一段減らせれば、FIP上でもトップ5に入り、防御率2点台前半が”本物の数字”になる」——これが山本の次の伸びしろだ。防御率が実力を上回っている今こそ、内容面の底上げが順位を盤石にする鍵になる。
まとめ
- 2023年以降の通算防御率トップ5は、スクーバル・スキーンズ・山本由伸・セール・サンチェス(2026年8月13日時点/通算350回以上・ダイヤモンドスタッツ調べ)。
- 大物のウィーラー(2.96)・コール(2.97)が僅差で圏外に沈む「まさかの顔ぶれ」が話題の正体。
- 運を除いたFIPで並べ直すと、クロシェットが4位に急浮上し、山本由伸は3位→8位へ後退。防御率とFIPの差は投手の”運”を映す。
- スクーバルとスキーンズは防御率=FIPで内容と結果が完全一致。文句なしの「真のトップ2」だ。
DiamondStats編集部の独自視点!
同じ「防御率が低い投手」でも、中身はまるで違う。スクーバルのように奪三振で相手を圧倒して点を与えない投手と、山本のように守備と試合運びで失点を抑える投手——どちらも一流だが、勝ち方の設計図が異なる。ここから後半戦、山本が被本塁打を減らして「奪三振型」の指標も引き上げてくるのか。あるいはクロシェットが不運を取り戻して防御率をFIP並みに縮めてくるのか。数字の裏側まで追うと、残りシーズンの投手戦がぐっと面白くなる。ぜひ次の登板を、防御率とFIPの両目で見てほしい。
よくある質問
Q. 2023年以降のMLB通算防御率1位は誰ですか?
タイガースのタリク・スクーバルで、通算防御率は2.49です(2026年8月13日時点/2023年以降の通算350投球回以上、ダイヤモンドスタッツ調べ)。2位はポール・スキーンズの2.53です。

Q. 山本由伸は防御率ランキングで何位ですか?
全体3位(防御率2.66)です。ただし運の影響を除いたFIPで並べ替えると全体8位(3.00)まで下がり、防御率が実力よりやや良く出ている傾向が読み取れます。
Q. FIPとは何ですか?防御率と何が違うのですか?
FIPは、投手が自分で管理できる本塁打・四死球・奪三振だけで失点を評価する指標で、守備や打球の運を切り離せます。防御率と同じスケール(低いほど良い)で読めるため、「実力ベースの防御率」として比較できます。
Q. なぜウィーラーやコールがトップ5に入っていないのですか?
僅差だからです。ウィーラーは2.96で7位、コールは2.97で8位。トップ5との差はわずか0.1前後で、この期間は接戦でした。
Q. どのデータを使って集計していますか?
MLB公式Statsの2023年以降の実測値です。FIPは公式の構成要素(本塁打・四死球・奪三振・投球回)からDiamondStatsが独自に算出しています。
こうした投手戦を実際の映像で追いたい方は、MLBを日本で視聴する方法の比較ガイドで、プライム・ビデオ・スポティービー・ナウ・地上波などの選び方をチェックしてみてください。山本由伸の投球をより深く知りたい方は、歴代ドジャース最速級の100奪三振到達を分析した記事もおすすめです。





