9月8日、メジャーリーグ(MLB)の30球団から32球団への拡張構想について、候補6都市の準備状況が詳細に報じられた。結論は明確で、西部枠ではソルトレークシティが「オーナー・球場資金・建設用地」の3条件をすべて満たす唯一の有力候補として単独首位に立ち、東部枠ではナッシュビルが知名度で先行する一方、同じ3条件はいずれも未達のままだ。ロブ・マンフレッド・コミッショナーが2029年1月の退任前に2都市を決定したい方針と重なり、候補地間の「準備度の差」が数字で可視化された日となった。
9月8日時点|6候補都市の3条件チェック表

MLB拡張で実務上重視されるのは、人口やメディア市場の規模より先に、オーナー体制・球場資金・建設用地の3点がそろっているかどうかだ。9月8日に公開された候補地分析では、この3条件を軸に6都市を評価している。
| 候補都市 | 統計地域人口(2020年国勢調査) | メディア市場順位 | オーナー | 球場資金 | 建設用地 |
|---|---|---|---|---|---|
| ソルトレークシティ | 270万5693人 | 28位 | あり | あり | あり |
| ナッシュビル | 225万0282人 | 25位 | なし | なし | なし |
| ローリー | 224万2324人 | 22位 | あり | なし | なし |
| ポートランド | 328万0736人 | 23位 | なし | あり | あり |
| オーランド | 419万7095人 | 15位 | なし | なし | 提案段階 |
| モントリオール | 429万1732人 | カナダ2位 | なし | なし | なし |
太字のソルトレークシティだけが3条件すべてに「あり」と評価された。 ナッシュビルはメディア市場25位とソルトレークシティ(28位)より上位だが、3条件はすべて空白。ローリーは22位と市場規模では最上位クラスだが、資金と用地が未確定。ポートランドは人口328万人・資金・用地の2点は揃うが、オーナー不在が足を引っ張る構図だ。
ソルトレークシティが「西部本命」と呼ばれる根拠
ソルトレークシティの入札主体はビッグリーグ・ユタ。バックボーンはNBAジャズを移転危機から救い、30年以上運営してきたラリー・H・ミラー・カンパニーだ。9月8日の分析では、このオーナー経験が「入札の安定性」として他候補との決定的な差になっていると整理された。
資金面の数字は次のとおりだ。
- オーナー側:35億ドル(約5250億円) を100エーカー規模の複合開発に充当する意向
- ユタ州:9億ドル(約1350億円) を球場建設費の半分をカバーする形で確保(2024年に州議会可決)
- 建設用地:パワー・ディストリクト と呼ばれるソルトレークシティ西側の大規模サイトで、すでに工事が進行中
メディア市場28位は6候補の米国5都市の中で最下位だ。それでも首位評価の理由は、市場規模の小ささを、準備の早さが上回っているからだ。最近の球団売却額——ロサンゼルス・エンゼルス40億ドル(約6000億円)、サンディエゴ・パドレス39億ドル(約5850億円)——を踏まえると、拡張料金は25億ドル(約3750億円)超が想定され、資金力のあるオーナー不在の候補は実質的に脱落しやすい。
拡張のタイムラインと「28年ぶり」の位置づけ
9月8日の報道が示したスケジュール感は、候補地選定そのものより先に労使協定(CBA) が壁になる点だ。現行CBAは2026年12月1日に失効する。新協定成立後に拡張プロセスが本格化し、2027年までには拡張委員会が設置される可能性が高いとされる。
| 節目 | 時期 | 意味 |
|---|---|---|
| レイズ新球場の公的资金 | 2026年8月下旬 | 7億9600万ドル(約1194億円)承認。マンフレッド氏が拡張前に求めていた球場問題の主要障害が解消 |
| 現行CBA失効 | 2026年12月1日 | 拡張議論は新CBA後に本格化 |
| 候補地決定目標 | 2029年1月まで | マンフレッド氏退任前に東西各1都市 |
| 新球団の開幕 | 2032年頃(見込み) | 建設・組織立ち上げの期間を考慮 |
MLBの前回拡張は1998年のアリゾナ・ダイヤモンドバックスとタンパベイ・レイズの参入で、30球団体制が始まってから28年が経過している。1961年の拡張開始以来、新球団が加わらない期間としては最長クラスだ。DiamondStats調べでは、1998年以降にMLB全体の年間試合数は30球団×162試合÷2=2430試合で固定されており、32球団化が実現すれば2592試合へ増加する計算になる(1球団あたり162試合は不変、試合総数は162試合分増)。
東部枠の逆転可能性|ナッシュビルの空白3条件
東部枠では長年ナッシュビルが「音楽の街」として人気候補だった。統計地域人口225万人、メディア市場25位と、ソルトレークシティより市場指標では上だ。しかし9月8日時点の評価では、オーナー・資金・用地の3条件がすべて未達であり、複数の現役MLBオーナーが「拡張委員会の時限までに3点をそろえられるか」と疑問視している。
ナッシュビル側のミュージック・シティ・ベースボールは、ブランド「ナッシュビル・スターズ」の構築やアドバイザー陣の充実など、人気づくりは進んでいる。一方、市長フレディ・オコネル氏は公的資金に否定的で民間資金での球場建設を想定しており、州知事候補筆頭のマーシャ・ブラックバーン氏も拡張を優先課題にしていない。ローリーはトム・ダンドン氏(カロライナ・ハリケーンズオーナー)が支援を表明し、州人口では2030年代に全米7位規模へ伸びる見込みがあるなど、市場規模22位・オーナーありという点で追い上げの余地を残す。
まとめ
9月8日に報じられたMLB拡張候補の最新評価は、単なる「どの都市が人気か」ではなく、3条件の達成数で候補地が序列付けされた点が本質だ。西部ではソルトレークシティが3/3で単独首位、ポートランドが2/3で追走、東部ではナッシュビルが知名度先行も0/3で足踏み、ローリーが1/3で暗闘——という構図が9月9日現在のデータ像である。32球団化そのものはマンフレッド氏の退任前決定が目標だが、新球団の実戦投入は2032年頃まで見込む分析もあり、候補地選定は「今から3年以内」、開幕は「さらに3〜4年後」という二段階の話として整理する必要がある。
よくある質問
Q. MLBはいつ32球団になるのか
2029年1月までに候補2都市を決定する方針だが、新球団が実際に開幕するのは2032年頃が現実的な見通しとされる。前提条件は2026年12月1日失効の現行CBAの更新と、新CBA成立後の拡張委員会設置だ。
Q. ソルトレークシティが西部本命とされる最大の理由は何か
メディア市場28位と小さい一方で、オーナー(ラリー・H・ミラー・カンパニー)・州の9億ドル資金・パワー・ディストリクトの建設用地という3条件をすべて満たしている候補は、9月8日時点の6都市分析でソルトレークシティだけだったからだ。
Q. ナッシュビルは有力候補なのに何が足りないのか
統計地域225万人・メディア市場25位と市場規模では優位だが、オーナー・球場資金・建設用地の3点が未確定のままだ。公的资金に慎重な地方政治の空気も、急ぎの入札には不利に働く。
Q. 拡張料金はいくらになる見込みか
25億ドル(約3750億円)超が想定されている。最近のエンゼルス40億ドル、パドレス39億ドルの売却額を踏まえると、20億ドルを大きく超える水準と見られる。
Q. 32球団になったらリーグ編成はどう変わるのか
マンフレッド氏は地理的境界に沿った東西リーグ再編の可能性を示唆している。現行の30球団・6地区(各5球団)から、32球団・8地区(各4球団)への再編案が論点に上がる。選手の移動負担軽減と、同時間帯での地区内対戦増加が狙いだ。
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