米国時間10月8日(日本時間9日)、MLB機構は選手会との新労使協定交渉の場で、2029年からレギュラーシーズンを162試合から154試合に短縮し、ポストシーズンの地区シリーズを5回戦制から7回戦制に広げる案を提示しました。
ワイルドカードシリーズと地区シリーズで上位シードが対戦相手を選べる仕組みは、2027年からの導入を求めています。
選手会は同日、「機構はすべての提案がサラリーキャップへの同意を前提にしていると改めて明らかにした」と反発する声明を出しました。現行の労使協定は12月1日に失効します。
DiamondStats(ダイヤモンドスタッツ)が注目したのは、提案の「中身」です。154試合制はメジャーが1960年代に捨てた形で、地区シリーズの5回戦制は1995年から31年間続いてきました。この31年に行われた地区シリーズ124本がどう決着してきたかを独自集計すると、7回戦制を求める機構の言い分が数字で見えてきます。
提案の中身を数字で整理
| 項目 | 現行 | 機構の提案 |
|---|---|---|
| レギュラーシーズン | 162試合 | 154試合(2029年から) |
| 週の休養日 | 不定 | 毎週月曜(祝日・特別興行は除く) |
| 地区シリーズ | 5回戦制(3勝先取) | 7回戦制(4勝先取) |
| 地区シリーズ全体の最大試合数 | 20試合 | 28試合(最大8試合増) |
| ワイルドカードの対戦相手 | 順位で固定 | 第3シードが第5・第6シードから選ぶ(2027年から) |
| 地区シリーズの対戦相手 | 順位で固定 | 第1シードがワイルドカード勝者から選ぶ(2027年から) |
| シーズン終了 | 9月末 | 現行より1週間早い |
154試合制は選手の年俸を減らさず、出来高や契約オプションの基準だけ試合数に合わせて調整するとされています。機構側は週1回の休養日で週あたりのマイナー往復が約24%減る(1.90回から1.45回)とも説明しています。2029年は全国放送の新契約が始まる年で、月曜の試合枠を新しい全国放送の窓にする狙いも示されました。
154試合制は65年ぶりの回帰
154試合は、メジャーがかつて半世紀以上使っていた長さです。ア・リーグは1961年の10球団への拡張で162試合制に移り、ナ・リーグも1962年に続きました。2029年に154試合へ戻れば、ア・リーグにとって68シーズンぶり、ナ・リーグにとって67シーズンぶりの長さになります。
162試合制の最初の年には有名な論争があります。1961年にロジャー・マリスが61本塁打を放ったとき、当時のコミッショナーは「154試合以内に60本を超えなければベーブ・ルースの記録を破ったとは言えない」と見解を出しました。試合数の違いが記録の価値を左右する、という議論が最初から付いてきた制度です。
シーズン最多勝利の記録も試合数で読み方が変わります。116勝は1906年のカブス(152試合)と2001年のマリナーズ(162試合)が並んでいますが、勝率は.763と.716で大きく違います。
今季の上位球団を154試合換算にすると次のようになります(MLB公式の記録からDiamondStats調べ。10月10日現在)。
| 球団 | 2026年の成績 | 154試合換算の勝利数 |
|---|---|---|
| ブルワーズ | 103勝59敗 | 97.9勝 |
| ドジャース | 100勝62敗 | 95.1勝 |
| レイズ | 98勝64敗 | 93.2勝 |

今季のブルワーズは球団史上初の最高勝率103勝でシーズンを終えましたが、154試合制なら「100勝」という節目は遠のきます。100勝球団が出にくくなる制度でもあります。
地区シリーズ5回戦制の31年 124本の決着を独自集計
地区シリーズは1995年に始まってから、ずっと3勝先取の5回戦制でした(1981年のストライキ分割シーズンに1度だけ暫定実施)。DiamondStatsがMLB公式の記録から1995年から2025年までの124本の決着を集計すると、時代ごとに「決まり方」がはっきり変わっていました。
| 期間(制度) | 本数 | 3勝0敗 | 3勝1敗 | 3勝2敗(最終戦) |
|---|---|---|---|---|
| 1995〜2011年(8球団制) | 68本 | 27本(39.7%) | 24本(35.3%) | 17本(25.0%) |
| 2012〜2021年(10球団制) | 40本 | 6本(15.0%) | 14本(35.0%) | 20本(50.0%) |
| 2022〜2025年(12球団制) | 16本 | 2本(12.5%) | 5本(31.3%) | 9本(56.3%) |
| 31年合計 | 124本 | 35本(28.2%) | 43本(34.7%) | 46本(37.1%) |

8球団制の時代は4本に1本しか最終第5戦までもつれませんでした。ところが現行の12球団制では半分以上が第5戦までいき、3連勝で片が付くシリーズは16本のうち2本だけです。
さらに目立つのがナ・リーグです。ナ・リーグ地区シリーズは2010年を最後に、2025年まで15年間・30本連続で3勝0敗が出ていません。同じ期間のア・リーグには8本の3連勝決着があります。直近4年のナ・リーグ地区シリーズ8本のうち6本が第5戦決着でした。
5回戦制は実力差が小さい球団同士だと「第5戦の1試合」で勝ち上がりが決まります。機構が「地区シリーズを長くして最高の投手を大舞台で見る機会を増やす」と説明する背景には、この数字があります。
7回戦制で何が変わるか
リーグ優勝決定シリーズには先例があります。1969年に5回戦制で始まり、1985年に7回戦制へ広がって現在まで続いています。地区シリーズが7回戦制になれば、ワイルドカードから勝ち上がる球団の最大試合数はワイルドカード3試合+地区7試合+リーグ優勝決定7試合+ワールドシリーズ7試合の24試合で、現行の22試合から2試合増えます。
機構案では、地区シリーズの試合が増えるぶんリーグ優勝決定シリーズの第5戦・第6戦・第7戦の前に休養日を足し、平日昼間の試合をなくすとしています。レギュラーシーズンを1週間早く終えることで、10月の日程に余裕を作る設計です。
今季の地区シリーズではドジャースが3年連続でリーグ優勝決定シリーズに進み、121敗から2年で地区シリーズに戻ったホワイトソックスも戦いました。もし7回戦制なら、短期決戦で先発4番手まで必要になり、投手層の厚い球団に有利に働きます。
DiamondStats編集部の独自視点!
機構の案は、休養日と放送枠という「商売の話」と、地区シリーズの決着の「野球の話」が一体になっています。編集部が気になるのは後者です。現行の12球団制では地区シリーズの半分以上が第5戦までもつれ、ナ・リーグでは15年も3連勝決着が出ていません。5回戦制が「最高勝率球団に有利な制度」として機能していない以上、7回戦制の議論は遅かれ早かれ出てきた話でしょう。
一方で、対戦相手を選べる仕組みは諸刃の剣です。選んだ相手に負ければ「選び方を間違えた」という話題が10月の主役になります。第1シードの選択とその結果は、DiamondStatsが来季から追い続ける新しいデータ軸になります。
よくある質問
Q. MLBの154試合制はいつから始まる案ですか?
機構の提案では2029年シーズンからです。全国放送の新契約が始まる年に合わせています。選手会との労使協定が成立しなければ実現しません。
Q. 地区シリーズが7回戦制になると試合数はどれだけ増えますか?
4つの地区シリーズでそれぞれ最大2試合、合計で最大8試合増えます。ワイルドカードから勝ち上がる球団の最大試合数は22試合から24試合になります。
Q. 対戦相手を選べる仕組みはどういうものですか?
ワイルドカードシリーズでは第3シードが第5シードと第6シードのどちらと戦うかを選び、地区シリーズでは第1シードがワイルドカードの勝者のどちらと戦うかを選びます。2027年からの導入が提案されています。
Q. 選手会はこの案に賛成していますか?
反対の声明を出しています。機構のすべての提案がサラリーキャップ導入を前提にしていると指摘しています。現行の労使協定は2026年12月1日に失効します。
まとめ
MLB機構が示した154試合制と地区シリーズ7回戦制は、メジャーが68シーズン前に離れた長さへの回帰と、31年続いた短期決戦の形を変える提案です。DiamondStatsの集計では、現行制度の地区シリーズは半分以上が第5戦までもつれ、ナ・リーグでは2011年以降3連勝決着がありません。労使交渉は12月1日の協定失効が目前で、結論は年末以降にずれ込む見通しです。地区シリーズの投手起用を数字で振り返るなら、ドジャースが地区シリーズ防御率2.00で3年連続勝ち上がった記事もあわせてどうぞ。
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