8月28日、カンザスシティ・ロイヤルズのボビー・ウィット・ジュニアは、クリーブランド・ガーディアンズ戦で本塁打が出やすい打者として名前が挙がった。その夜、先発のタナー・ビビから左翼へ二塁打を放ち先制点の走者になったが、本塁打は0本。5打数1安打で試合を終えた。
8月28日時点の今季本塁打は16本、長打率は.459。2024年の32本・長打率.588から見ると、同じ打者の数字とは思えない落ち幅だ。名前と過去の一発で本塁打を予想すると、今季の打球の軌道を見落とす。
強い打球は増えても、本塁打の形ではない
DiamondStats(ダイヤモンドスタッツ)が年別のISOとフライ割合を独自集計すると、2026年は強い打球の割合が自己最高でも、フライが減りライナーが増えている。8月28日の本塁打候補は、今季の軌道と噛み合っていなかった。
年別ISOで見るピークからの距離
本塁打の「多さ」だけを見ると、試合数の違う年を同じ土俵に載せてしまう。ここでは本塁打率(本塁打÷打席)とISO(長打率−打率)で、ウィット本人の5シーズンを並べる。母集団はデビュー年の2022年から今季までで、結果を見る前に切った。

データはMLB公式Statsを独自に集計した。2026年は9月6日現在。
| 年 | 試合 | 本塁打 | 本塁打率 | ISO | 長打率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 2024 | 161 | 32 | 4.5% | .256 | .588 |
| 2023 | 158 | 30 | 4.3% | .218 | .495 |
| 2025 | 157 | 23 | 3.3% | .205 | .501 |
| 2022 | 150 | 20 | 3.2% | .174 | .428 |
| 2026 | 125 | 17 | 3.1% | .170 | .455 |
2026年のISO.170は、5シーズンで最下位。1位の2024年とは.086差で、2位の2023年とも.048差ある。新人の2022年(.174)とほぼ重なり、2024年のピークとは別物だ。
本塁打率も同じ並びになる。2024年4.5%、2023年4.3%のあとに2025年3.3%、2022年3.2%、2026年3.1%。9月6日現在の今季は、リーグ平均の本塁打率3.0%をわずかに上回る程度で、短距離の「一発の人」ではない。
8月28日時点に戻すと、本塁打は16本、当該試合後の長打率は.459。その後9月4日のブルージェイズ戦で17号が出て、9月6日現在は17本まで伸びた。8月28日の「候補」は、16本の地点で出ていた話である。
下図は2022〜2026年(9月6日現在)の本塁打とISO。対象期間はデビュー以降のレギュラーシーズンで、月を外していない。
8月28日は二塁打1本で本塁打は0
8月28日のガーディアンズ戦は、ロイヤルズが3-0で勝った。ウィットは遊撃で2番、5打数1安打、二塁打1、得点1、本塁打0、三振1。
5回、ビビの球を左翼へ運んで二塁打。三塁へ進んだあと、サルバドール・ペレスの遊ゴロで先制点を踏んだ。本塁打を見に来た人には物足りないが、走者としては仕事を果たしている。
ここがこの夜の核だ。本塁打候補として名前が挙がった打者が、同じ投手から長打は出しても本塁打にはしなかった。8月28日時点の長打率.459は「長打が出ない」数字ではない。出る長打の内訳が、本塁打より二塁打側に寄っている。
9月6日現在の今季は、二塁打30本に対して三塁打1本、本塁打17本。長打48本のうち本塁打の割合は35%。2024年は長打88本のうち本塁打32本で36%と近いが、当時はISO.256で長打そのものの価値が高かった。今季は長打の「高さ」が足りない。
本塁打が一夜に続くような夜もある。その極端な形は初打席から3打席連続本塁打が史上どう位置づくかで扱っている。ウィットの8月28日は逆で、長打は出ても本塁打の形にならなかった夜だ。
打球は強くなっているのに本塁打率が下がる
今季のウィットを「衰えた」で片づけると、数字が合わない。9月6日現在の打率.285、出塁率.362、OPS.817、OPS+132。出塁率は2024年の.389には届かないが、2025年の.351、2023年の.319より高い。四球率は10.7%で、5シーズンで最も四球を選べている。
問題は本塁打の材料である打球の種類だ。DiamondStats調べで、強い打球の割合とフライ・ライナーの比率を年別に置く。
| 年 | 強い打球の割合 | フライ割合 | ライナー割合 | 本塁打率 |
|---|---|---|---|---|
| 2022 | 38.8% | 33.4% | 22.6% | 3.2% |
| 2023 | 45.6% | 28.4% | 25.9% | 4.3% |
| 2024 | 48.3% | 30.5% | 25.1% | 4.5% |
| 2025 | 48.8% | 27.9% | 26.1% | 3.3% |
| 2026 | 51.5% | 26.7% | 28.0% | 3.1% |
2026年の強い打球の割合51.5%は自己最高。平均打球速度も92.3マイルで、2024年の92.7、2025年の93.3に近い。それでも本塁打率が5シーズンで最も低い。
差は角度側にある。フライ割合26.7%は5シーズンで最低。ライナー割合28.0%は5シーズンで最高。強い打球が外野の隙間を抜ける形に寄り、スタンドまでの高さが出にくい。8月28日の左翼二塁打は、その軌道そのものだった。
投手の表面的な勝敗や防御率だけで本塁打の出やすさを語ると、同じずれが起きる。防御率とFIPの差はFIPで見る投手の失点抑制の話になる。打者側でも、名前と対戦相性だけで本塁打を積むと、フライが減った今季のウィットを過大に見積もる。
162試合換算は22本 2022年型に戻っている
DiamondStats独自集計で、各年の本塁打を162試合に伸ばす。分母は実際の出場試合で、未消化分を同じペースと置く。
| 年 | 実際の本塁打 | 試合 | 162試合換算 |
|---|---|---|---|
| 2024 | 32 | 161 | 32本 |
| 2023 | 30 | 158 | 31本 |
| 2025 | 23 | 157 | 24本 |
| 2026(9月6日現在) | 17 | 125 | 22本 |
| 2022 | 20 | 150 | 22本 |
今季の換算22本は、2022年の換算22本と同じ帯。2024年の32本、2023年の31本とは10本前後の差が残る。8月28日時点の16本を、その後の17本(125試合)から逆算しても、着地点は20本台前半で、30本のラインには乗らない。
打数あたりの本塁打も同じ結論になる。2024年は636打数で32本、19.9打数に1本。2026年は9月6日現在488打数で17本、28.7打数に1本。2022年は591打数で20本、29.6打数に1本。今季の一発間隔は、ピーク年より約9打数長く、新人年に近い。
8月28日に本塁打候補とされたのは、この22本ペースの打者に対してである。過去の30本超や、特定投手との相性だけで上積みを見込むと、ISO.170の実態から離れる。
DiamondStats編集部の独自視点!
8月28日のウィットは、本塁打を「待たれる打者」のまま、本塁打を「量産する打者」ではなくなっていた。強い打球は残っている。四球も増えている。守備と走塁の価値も、OPS+132の総合値にまだ乗っている。
欠けているのは、フライの高さだ。同じ92マイル超の打球でも、ライナーは二塁打になり、フライは本塁打になる。8月28日の左翼二塁打は、待っていた人には外れ、今季の軌道には一致していた。
次に見るなら本塁打の本数より、フライ割合が26.7%から戻るかだ。戻れば22本換算は上振れする。戻らなければ、出塁と二塁打の短距離として数字を積む。名前で本塁打を予想する側は、その分岐を後回しにできない。
まとめ
8月28日、ウィットはガーディアンズ戦で本塁打候補として名前が挙がり、実際にはビビから二塁打1本、本塁打0で終わった。8月28日時点の今季は16本・長打率.459。9月6日現在は125試合17本、ISO.170、本塁打率3.1%、162試合換算22本。
強い打球の割合は自己最高の51.5%でも、フライ割合は自己最低の26.7%。2024年の32本・ISO.256とは別の打者に、本塁打の期待だけが残っていた夜だった。
データはMLB公式Statsを独自に集計。
よくある質問
Q. ボビー・ウィット・ジュニアの2026年本塁打は何本?

9月6日現在、125試合で17本。8月28日のガーディアンズ戦時点では16本で、その試合では本塁打は出ていない。162試合換算では22本になる。
Q. 8月28日のガーディアンズ戦でウィットは何をした?
5打数1安打、二塁打1、得点1、本塁打0。5回にタナー・ビビから左翼二塁打を放ち、先制点の走者になった。試合はロイヤルズが3-0で勝った。
Q. ウィットの長打は2024年からどれだけ落ちた?
長打率は2024年の.588に対し、8月28日時点.459、9月6日現在.455。ISOは.256から.170へ.086下がった。本塁打率は4.5%から3.1%。
Q. ISOとは何か
長打率から打率を引いた値で、長打の「高さ」を見る。単打が多くてもISOは上がらない。ウィットの2026年.170は、2022年の.174と並ぶ自己最低圏だ。
Q. 今季も本塁打が出やすい打者なのか
9月6日現在の本塁打率3.1%はリーグ平均3.0%付近。強い打球は多いがフライが減り、162試合換算は22本。30本超の2023〜2024年と同じ目で本塁打を積む数字ではない。
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文:DiamondStats 分析チーム(MLBデータ分析担当)|データ出典:MLB公式Stats(2026年9月時点)





