10月上旬、MLB機構が30球団に対し、ロックアウトに備えた手続きをまとめた通達を送った。現行の労使協定は米東部時間12月1日午後11時59分に失効し、新協定がまとまらなければ翌12月2日から球団側が選手を締め出す見通しだ。通達では、ロックアウト中は40人枠の選手との接触が原則禁止と定められている。つまりメジャー契約のFA交渉もトレードも、その瞬間に全部止まる。
10月15日現在、失効まで残り47日。DiamondStats(ダイヤモンドスタッツ)は、この冬のFA市場が「いつまで動けるのか」「止まる前にどれだけの金額が動くのか」を、過去の数字と並べて検証した。日本では日本人選手の去就と絡めて話題になっているが、本記事は制度そのものを主役にする。
残り47日 FA市場が実際に動ける日数を整理
労使協定の失効日が決まっているため、今年のオフは日程の逆算がすべてになる。MLB公式の日程から、契約に関わる節目を並べた。
| 節目 | 日付(米東部時間) | FA市場との関係 |
|---|---|---|
| ワールドシリーズ最終戦(第7戦まで) | 10月31日まで | 終了翌日からオフが始まる |
| 旧所属球団との独占交渉期間 | 終了翌日から5日間 | 他球団とは契約できない |
| FA解禁・クオリファイングオファー提示期限 | 11月1日〜5日 | 全球団と交渉可能に |
| クオリファイングオファー回答期限 | 提示から10日後 | 受諾なら1年契約 |
| ノンテンダー期限 | 11月20日 | 新たなFAが市場に出る |
| 労使協定の失効 | 12月1日 | 翌日からロックアウトの見通し |
| ウィンターミーティング | 12月7〜9日 | ロックアウトなら中止見込み |
ワールドシリーズが第7戦までもつれた場合、他球団との交渉が解禁されるのは11月5日になる。そこから12月1日まではわずか26日しかない。通常のオフなら市場は翌年2月まで4か月近く開いているので、交渉期間は例年の4分の1以下に圧縮される計算だ(DiamondStats独自集計)。
今オフの契約・移籍の動きはMLB FA・移籍 一覧 2026-27で随時まとめている。
2021年の前例 ロックアウト前日に1日で2,212億円が動いた
同じ構図は5年前にもあった。前回の労使協定は2021年12月1日に失効し、翌2日から99日間のロックアウトに入った。このとき球団は失効直前に契約を一気に片付けている。
失効当日の2021年12月1日、30球団が1日で結んだ契約総額は14億ドル。1日で10億ドルを超えたのは史上初だった。11月下旬からの数日に限っても総額は19億ドルを超えている。本記事では1ドル=158円(10月15日時点)で換算する。
| 2021年12月1日前後の主な契約 | 球団 | 年数 | 総額 |
|---|---|---|---|
| コーリー・シーガー | レンジャーズ | 10年 | 513億円 |
| マーカス・セミエン | レンジャーズ | 7年 | 276億円 |
| ハビアー・バエス | タイガース | 6年 | 221億円 |
| マックス・シャーザー | メッツ | 3年 | 205億円 |
| ケビン・ゴーズマン | ブルージェイズ | 5年 | 174億円 |

| 期間 | 動いた金額 |
|---|---|
| 2021年12月1日の1日 | 2,212億円(14億ドル) |
| 2021年11月下旬〜12月1日 | 3,002億円超(19億ドル超) |
結果として2021-22年のロックアウトは99日続き、開幕は3月31日から4月7日へ1週間延びたが、162試合は守られた。先に契約を済ませた選手は再開後すぐにキャンプへ合流できた一方、市場に残った選手は3月10日まで交渉すらできなかった。
今年も同じことが起きるなら、11月下旬の数日に大型契約が集中する。日本人選手の去就が「年内にまとまるか」と語られているのは、この日程の縛りが背景にある。
クオリファイングオファーは36.6億円 15年で1.74倍
FA市場の値段の目安になるのがクオリファイングオファー(QO)だ。年俸上位125人の平均で毎年決まり、今オフの額は2,315万ドル(36.6億円)と報じられた。前年から5.1%の増加で、制度が始まった2012年の13.3百万ドルから1.74倍になっている。
| オフ | QOの額(億円) | 百万ドル |
|---|---|---|
| 2012-13 | 21.0 | 13.3 |
| 2016-17 | 27.2 | 17.2 |
| 2021-22 | 29.1 | 18.4 |
| 2022-23 | 31.0 | 19.65 |
| 2023-24 | 32.1 | 20.325 |
| 2024-25 | 33.3 | 21.05 |
| 2025-26 | 34.8 | 22.025 |
| 2026-27 | 36.6 | 23.15 |

注目したいのは、前回ロックアウト直前の2021-22年だけ前年比で減っている点だ。2020年の短縮シーズンで年俸上位層の収入が減った影響で、18.9百万ドルから18.4百万ドルへ下がった。労使の対立が長引けば、2027-28年のQOも同じように下がる可能性がある。
なお、MLB機構は6月の提案でQO制度の廃止を打ち出している。今オフのQOが「現行制度での最後」になる可能性もある。
ぜいたく税の基準額は2027年が白紙 契約の天井が見えない
もうひとつ、FA市場の天井を決めているのがぜいたく税(コンピティティブ・バランス・タックス)の基準額だ。現行協定では2022年の2億3,000万ドルから毎年上がり、2026年は2億4,400万ドル(385.5億円)。前協定の初年度2017年(1億9,500万ドル)から10年で25%増えた。
| 年 | 基準額(億円) | 百万ドル |
|---|---|---|
| 2017 | 308.1 | 195 |
| 2019 | 325.5 | 206 |
| 2021 | 331.8 | 210 |
| 2022 | 363.4 | 230 |
| 2024 | 374.5 | 237 |
| 2025 | 380.8 | 241 |
| 2026 | 385.5 | 244 |
| 2027 | 未定 | 未定 |
問題は2027年の欄が空白なことだ。5月の交渉で選手会は基準額を3億ドル(474億円)へ引き上げる案を出し、機構側は逆に2億4,530万ドル(387.6億円)の上限(サラリーキャップ)と1億7,120万ドル(270.5億円)の下限を提案した。両者の差は約86億円。球団が今オフに10年契約を結ぶとき、2027年以降の「税金の壁」がどこにあるか分からないまま判断することになる。
2025年は基準額を超えた球団が9つで、税の総額は4億260万ドル(636億円)と過去最高だった。ドジャース1球団だけで1億6,940万ドル(267.7億円)を納めている。各球団の年俸規模はMLB年俸ランキング2026 上位100人で確認できる。
DiamondStats編集部の独自視点!
今年のFA市場は「誰がどこへ行くか」より前に「いつまで動けるか」が決まってしまっている。2021年の数字が示すのは、球団は締め切りがあれば1日で2,000億円を使えるということだ。今年は交渉期間が最短26日しかない分、11月下旬の密度はさらに上がるだろう。一方で、基準額の空白と上限制度の提案は、長期契約を結ぶ側に慎重さを求める。駆け込みで動くのは短期・中期の契約が中心で、10年規模の契約はロックアウト明けまで持ち越される。これが編集部の見立てだ。
表彰の発表は11月9日から12日に予定されている。受賞者の多くは契約下の選手だが、FAの評価額にも直結するので、MLB表彰2026 結果一覧とあわせて市場の動きを追ってほしい。
まとめ
MLB機構は10月上旬に各球団へロックアウト準備の通達を出し、12月1日の労使協定失効と同時にFA市場が止まる見通しとなった。10月15日現在で残り47日、他球団との交渉が解禁されてからは最短26日しかない。2021年の前例では失効当日に2,212億円が動き、99日間のロックアウトでも162試合は守られた。今オフはQOが36.6億円と過去最高になる一方、2027年のぜいたく税の基準額は白紙のままで、長期契約の判断材料が欠けている。11月下旬の数日が、この冬の移籍市場の大半を決めることになる。
よくある質問
Q. MLBのロックアウトはいつから始まるのか?
現行の労使協定は米東部時間2026年12月1日午後11時59分に失効する。新協定がまとまらなければ、翌12月2日から球団側が選手を締め出す見通しだ。
Q. ロックアウト中はFA契約やトレードはできないのか?
できない。40人枠の選手と球団の接触が禁止されるため、メジャー契約の交渉・トレードは全面的に止まる。マイナー契約の選手は別の協定で動いているので影響を受けない。
Q. 前回のロックアウトはどれくらい続いたのか?
2021年12月2日から2022年3月10日までの99日間。開幕は3月31日から4月7日へ1週間延びたが、162試合は全部行われた。
Q. クオリファイングオファーとは何か?
FAになる選手に旧所属球団が出せる1年契約の提示で、年俸上位125人の平均額で決まる。今オフは2,315万ドル(約36.6億円)と報じられている。
Q. ぜいたく税の基準額は2027年にいくらになるのか?
未定。選手会は3億ドル(474億円)への引き上げを求め、機構側は2億4,530万ドルの上限制を提案しており、合意に至っていない。
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