ミルウォーキー・ブルワーズが10月14日(米国時間)、編成部門の「ベースボールシステムズ」に所属するシニアのソフトウェア技術者の求人を公開しました。球団の選手情報システムを設計・開発し、若手技術者を指導する中核の役割です。ちょうどこの日、ブルワーズはリーグ優勝決定シリーズ第3戦で敵地のドジャースを6-2で下し、10月15日現在で3勝0敗とワールドシリーズに王手をかけています。
勝負どころの真っ最中に、球団が「裏方の道具を作る人」を募集した。この一致は偶然ではありません。今季のブルワーズは本塁打が30球団で28位なのに、得点は2位。長打に頼らず103勝を積み上げた中身は、データで選手を選び、データで育てる仕組みそのものです。求人票を入口に、その仕組みが成績にどう表れているかをMLB公式Statsの数字で確かめます。
求人票が求めているのは「選手情報システム」を作れる人
公開された求人票の主な条件は次のとおりです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 職名 | シニア・ソフトウェアエンジニア(ベースボールシステムズ) |
| 所属 | 編成部門の中のベースボールシステムズ(データ技術者とソフトウェア技術者の2チーム構成) |
| 主な仕事 | 選手情報システムの設計・開発・保守。他の技術者の設計を指導し、新しい道具や枠組みを評価して取り込む |
| 必須経験 | 関連分野の学士号と実務5年以上。ウェブの画面からデータベースまで一通り作れること。生成AIの大規模言語モデルを使った経験 |
| 歓迎 | 球団・リーグなど野球の組織での実務経験 |
| 年収 | 記載なし |
| 勤務地 | ウィスコンシン州ミルウォーキー |
注目は2点あります。1つは、部門がデータ技術者とソフトウェア技術者の2チームに分かれていると明記されていること。データを集める人と、それを現場の画面に届ける人を分けて抱える規模だということです。
もう1つは、必須経験に生成AIの利用が入っていることです。選手情報システムの中に、文章や映像を要約して現場へ渡す仕組みを組み込もうとしている姿勢が読み取れます。
同じ10月には、メッツも同じ職種の技術者を募集しています。年収まで公開していたメッツの求人はメッツが年収最大2531万円で球団システム技術者を公募した記事で検証しました。地区最下位の球団とリーグ優勝決定シリーズを戦う球団が、同じ月に同じ役割を探している。裏方の技術者が球団の標準装備になったことを示す並びです。
9年で8度のポストシーズン進出 勝ち数は30球団で4位
まず、この求人を出した球団がどれだけ勝ってきたかを並べます。MLB公式Statsの順位表を2018年から独自に集計しました(10月15日現在・2026年はレギュラーシーズン全162試合終了)。
| 年 | 勝敗 | 30球団中の勝ち数順位 | 地区順位 | ポストシーズン |
|---|---|---|---|---|
| 2018年 | 96勝67敗 | 5位 | 1位 | 進出 |
| 2019年 | 89勝73敗 | 11位 | 2位 | 進出 |
| 2020年 | 29勝31敗 | 16位 | 4位 | 進出 |
| 2021年 | 95勝67敗 | 4位タイ | 1位 | 進出 |
| 2022年 | 86勝76敗 | 13位 | 2位 | なし |
| 2023年 | 92勝70敗 | 5位 | 1位 | 進出 |
| 2024年 | 93勝69敗 | 4位タイ | 1位 | 進出 |
| 2025年 | 97勝65敗 | 1位 | 1位 | 進出 |
| 2026年 | 103勝59敗 | 1位 | 1位 | 進出 |
9年で8度のポストシーズン進出、地区優勝は6回。勝ち数が30球団で1位の年は2025年と2026年の2年連続です。103勝は球団史上で初めての100勝超えです。
この9年間の勝ち数を合計して、上位5球団を並べると次のようになります。本拠地の観客動員(2026年レギュラーシーズン・1試合平均)も添えました。
| 順位 | 球団 | 2018〜2026年の勝ち数 | ポストシーズン進出回数 | 2026年の観客動員(1試合平均) | 観客動員の順位 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1位 | ドジャース | 849勝 | 9回 | 49,805人 | 1位 |
| 2位 | ヤンキース | 790勝 | 8回 | 41,736人 | 2位 |
| 3位 | アストロズ | 786勝 | 8回 | 30,520人 | 14位 |
| 4位 | ブルワーズ | 780勝 | 8回 | 34,431人 | 11位 |
| 5位 | ブレーブス | 774勝 | 8回 | 35,006人 | 9位 |

ドジャースとの差は69勝ですが、2位のヤンキースとは10勝差、3位のアストロズとは6勝差しかありません。ミルウォーキーはメジャー30球団の本拠地でいちばん小さな都市圏で、報道では2026年の年俸総額も30球団で20位台です。観客動員は11位と健闘していますが、収入の規模で上位3球団と肩を並べているわけではありません。それでも勝ち数ではこの位置にいる。差を埋めているのが、求人票にある「選手情報システム」の側だというのが本記事の見立てです。
本塁打28位で得点2位 出塁を買って長打を買わない打線
データ戦略がいちばんはっきり数字に出ているのが今季の打線です。MLB公式Statsのチーム打撃成績から、ブルワーズの30球団中の順位を独自に集計しました(10月15日現在・レギュラーシーズン)。
| 指標 | ブルワーズ | 30球団中の順位 | 30球団の平均 |
|---|---|---|---|
| 打率 | .258 | 1位 | .244 |
| 出塁率 | .341 | 1位 | .318 |
| 四球 | 668 | 2位 | 545 |
| 盗塁 | 162 | 5位 | 110 |
| 二塁打 | 279 | 5位 | 250 |
| 本塁打 | 154 | 28位 | – |
| 得点 | 832 | 2位 | – |
本塁打は下から3番目なのに、得点は上から2番目。打率と出塁率は30球団で1位、四球は2位です。長打で点を取るのではなく、出塁と走塁で点を取る打線を意図して組んでいることが分かります。
これは市場で高い買い物をしない球団の合理的な選択でもあります。本塁打を打つ選手は年俸が高く、出塁率の高い選手や足の速い選手は相対的に安い。どの能力が得点に結びつくかを自前のデータで測り、安い側を選ぶ。その測定を支えるのが、今回の求人で作る選手情報システムです。
投手陣は9年で防御率トップ5が6回 今季は3.51で2位
もう一方の柱が投手陣です。ブルワーズのチーム防御率と30球団中の順位を、2018年から並べました(MLB公式Stats・レギュラーシーズン)。
| 年 | チーム防御率 | 30球団中の順位 | 30球団の平均 |
|---|---|---|---|
| 2018年 | 3.73 | 5位 | 4.15 |
| 2019年 | 4.40 | 16位 | 4.50 |
| 2020年 | 4.16 | 11位 | 4.45 |
| 2021年 | 3.50 | 3位 | 4.26 |
| 2022年 | 3.83 | 12位 | 3.97 |
| 2023年 | 3.71 | 1位 | 4.33 |
| 2024年 | 3.65 | 5位 | 4.07 |
| 2025年 | 3.58 | 2位 | 4.15 |
| 2026年 | 3.51 | 2位 | 4.17 |

9年のうち6回がトップ5、直近4年は1位・5位・2位・2位です。今季は奪三振1544が30球団で2位、WHIP1.18が4位、失点618が4位でした。
高額のエース投手を毎年買い足しているわけではありません。他球団から来た投手の球種を組み替え、自前で育てた若手を時間をかけて仕上げる。今季オールスターにも選ばれたジェイコブ・ミジオロウスキーは、その育成の代表例です。彼の球速の記録はジェイコブ・ミジオロウスキーが100マイル超1115球でトラッキング史上最多の記事で検証しています。
得失点差214は103勝に見合う数字
得点832・失点618から、DiamondStats(ダイヤモンドスタッツ)独自集計で期待勝率(ピタゴラス勝率)を算出すると.644。162試合換算で約104勝です。実際の103勝はそれにほぼ一致しており、運に恵まれて勝ち数を水増ししたのではなく、得失点の実力どおりの成績だったことが分かります。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 得点 | 832 |
| 失点 | 618 |
| 得失点差 | +214 |
| 期待勝率(DiamondStats独自集計) | .644 |
| 期待勝利数(162試合換算) | 約104勝 |
| 実際の勝利数 | 103勝 |
得点は2位、失点は4位。打つ方と守る方の両方で上位5位に入っている球団は、長打を買わず、エースを買わずにここまで来ています。
DiamondStats編集部の独自視点!
求人票でいちばん面白いのは、求める経験に「野球」が必須として入っていないことです。歓迎条件には入っていますが、必須は学位と実務5年と生成AIの利用経験。ブルワーズが探しているのは野球を知っている人ではなく、野球の現場が使う道具を作れる人です。
もう一つ、リーグ優勝決定シリーズで王手をかけた当日に求人を出すという時期の選び方にも、この球団らしさが出ています。勝っているときほど裏方の採用がしやすい。注目が集まるタイミングを使って、選手ではなく技術者を補強しにかかっています。
ワールドシリーズまであと1勝。もしブルワーズが頂点に立てば、観客動員11位の球団が本塁打28位の打線で世界一になったことになります。その裏側で動いているのが、今回募集された技術者が作るシステムです。来季、この求人で入った人が作る道具が、どの数字に表れてくるのかを編集部は追い続けます。
まとめ
ブルワーズは10月14日(米国時間)、選手情報システムを作るシニアのソフトウェア技術者を募集しました。球団は9年で8度ポストシーズンに進出し、2018年からの勝ち数780は30球団で4位です。今季は本塁打28位で得点2位、チーム防御率3.51で2位、得失点差+214で103勝。長打もエースも高値で買わずに勝つ仕組みを、データを扱う裏方が支えています。データはMLB公式Statsを独自に集計しました。
よくある質問
Q. ブルワーズの技術者求人はどんな仕事ですか
編成部門のベースボールシステムズに所属し、球団の選手情報システムを設計・開発・保守する仕事です。他の技術者の設計を指導する役割も含まれます。必須は関連分野の学位と実務5年以上で、生成AIの利用経験も求められています。年収は求人票に記載がありません。
Q. ブルワーズの2026年の成績はどうでしたか
レギュラーシーズンは103勝59敗で、30球団で最多の勝ち数でした。ナショナル・リーグ中地区で優勝し、球団史上初めて100勝を超えました。10月15日現在、リーグ優勝決定シリーズでドジャースに3勝0敗と王手をかけています。
Q. ブルワーズはなぜ本塁打が少ないのに得点が多いのですか
今季の本塁打154は30球団で28位ですが、打率.258と出塁率.341はどちらも1位、四球668は2位、盗塁162は5位です。長打ではなく出塁と走塁で得点を積み上げる打線を組んでいるためです。
Q. ブルワーズは何年連続でポストシーズンに出ていますか
2023年から4年連続です。2018年から2026年までの9年間では、2022年を除く8度進出しています。
Q. ブルワーズのチーム防御率は何位ですか
2026年のチーム防御率は3.51で30球団中2位です。2023年は1位、2024年は5位、2025年は2位で、直近4年はすべてトップ5に入っています。
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