2026年のメジャーリーグは現地9月27日にレギュラーシーズン全2,430試合を終え、今季から本格導入された自動ボール・ストライク判定(ABS)チャレンジの1年目の集計が確定した。申告は10,557回、判定が覆ったのは5,686回で、成功率は53.9%。1試合あたり4.3回の申告があった計算になる。
この確定値で30球団の先頭に立ったのが、シンシナティ・レッズだ。370回の申告で228回を覆し、成功率61.6%は全球団で唯一の6割超え。チャレンジで動いた得点を積み上げた「得点換算」でも16.8点のプラスで1位だった。レッズは今季75勝87敗でナショナル・リーグ中地区の最下位。順位表では沈んだ球団が、判定を覆す技術では頂点に立った。
DiamondStats(ダイヤモンドスタッツ)は、MLB公式Statsが公開する全チャレンジの記録を独自に集計し、レッズの1位がどこで生まれたのかを「捕手側の申告」と「打者側の申告」に分けて調べた。結論を先に言うと、レッズの1位は捕手側の申告200回で136回を覆した成功率68.0%(30球団2位)が土台で、打者側の54.1%(5位)がそれを支えた形だ。どちらか一方が突出した球団は1位になれていない。
レッズの成功率61.6% 捕手側68.0%と打者側54.1%の両立で1位
ABSチャレンジは、捕手・投手(守備側)か打者(攻撃側)が判定直後に帽子やヘルメットを叩いて申告する。各球団は1試合2回の権利を持ち、成功すれば権利は減らず、失敗すると1回ずつ消える。
守備側と攻撃側を分けると、リーグ全体の成功率には大きな差がある。9月27日(現地)終了時点の集計は次の通り。
| 申告した側 | 申告数 | 覆った数 | 成功率 |
|---|---|---|---|
| 守備側(捕手・投手) | 5,792回 | 3,358回 | 58.0% |
| 攻撃側(打者) | 4,765回 | 2,328回 | 48.9% |
| 合計 | 10,557回 | 5,686回 | 53.9% |
同じ分け方でレッズを見ると、守備側も攻撃側もリーグ平均を10ポイント前後上回っている。
| レッズの申告 | 申告数 | 覆った数 | 成功率 | 30球団中の順位 | リーグ平均 |
|---|---|---|---|---|---|
| 守備側 | 200回 | 136回 | 68.0% | 2位 | 58.0% |
| 攻撃側 | 170回 | 92回 | 54.1% | 5位 | 48.9% |
| 合計 | 370回 | 228回 | 61.6% | 1位 | 53.9% |
守備側の成功率だけなら、フィリーズの69.4%(147回中102回)がレッズを上回る。ところがフィリーズは打者側が47.8%でリーグ平均を下回り、合計では57.4%の7位にとどまった。反対に打者側1位のダイヤモンドバックス(56.9%)は、守備側が62.2%の8位で、合計3位。両方で上位5位以内に入ったのはレッズだけだった(DiamondStats調べ)。
成功率の上位10球団を並べると、その構図がはっきりする。
| 順位 | 球団 | 申告数 | 覆った数 | 成功率 | 守備側成功率 | 打者側成功率 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | レッズ | 370回 | 228回 | 61.6% | 68.0% | 54.1% |
| 2 | アスレチックス | 373回 | 225回 | 60.3% | 62.8% | 56.8% |
| 3 | ダイヤモンドバックス | 308回 | 184回 | 59.7% | 62.2% | 56.9% |
| 4 | カブス | 338回 | 199回 | 58.9% | 65.9% | 51.2% |
| 5 | レンジャーズ | 293回 | 170回 | 58.0% | 64.9% | 50.4% |
| 6 | タイガース | 331回 | 190回 | 57.4% | 62.6% | 52.8% |
| 7 | フィリーズ | 333回 | 191回 | 57.4% | 69.4% | 47.8% |
| 8 | マーリンズ | 402回 | 227回 | 56.5% | 60.2% | 50.6% |
| 9 | ロイヤルズ | 332回 | 184回 | 55.4% | 55.9% | 54.8% |
| 10 | ブルージェイズ | 340回 | 188回 | 55.3% | 55.6% | 54.9% |

最下位はパイレーツの47.0%(355回中167回)で、レッズとの差は14.6ポイント。2位アスレチックスとの差は1.3ポイントだった。
得点換算16.8点で1位 上位4球団はすべて負け越し
MLB公式Statsは、覆った1球ごとに「その判定変更で動いた得点の期待値」を算出し、球団ごとに差し引きしている。レッズは自軍の申告で47.6点ぶんを稼ぎ、相手の申告で30.8点ぶんを失って、差し引き16.8点のプラス。これも30球団で1位だった。
| 順位 | 球団 | 得点換算の差し引き | 今季の勝敗 |
|---|---|---|---|
| 1 | レッズ | +16.8点 | 75勝87敗 |
| 2 | エンゼルス | +14.0点 | 62勝100敗 |
| 3 | アスレチックス | +12.3点 | 64勝98敗 |
| 4 | ツインズ | +10.1点 | 77勝85敗 |
| 26 | ドジャース | -8.5点 | ポストシーズン進出 |
| 27 | ジャイアンツ | -9.5点 | ー |
| 28 | カージナルス | -10.3点 | ー |
| 29 | オリオールズ | -11.9点 | ー |
| 30 | ガーディアンズ | -13.4点 | ポストシーズン進出 |
上位4球団はすべて今季負け越しで、エンゼルスは100敗している。一方で下位にはポストシーズンに進んだドジャースとガーディアンズが並ぶ。チャレンジの上手さと球団の強さは、1年目のデータでは結びついていない。
16.8点は、1年目の制度としては小さくない数字だ。一般に10点の得点差が1勝ぶんに相当するとされる目安に当てはめると、レッズはチャレンジだけで1.5勝ぶん以上を手にした計算になる(DiamondStats独自集計)。75勝87敗の球団にとって、判定を覆す力は数少ない「勝っていた部門」だった。
ドジャースが得点換算でマイナスに沈んだ一方で、終盤に三振判定を集中的に覆した戦術については、ドジャースがABSで三振判定を25回覆した戦術のデータ検証で詳しく扱っている。
捕手がリードを握る仕組み 序盤は68%で9回は42%
守備側の成功率が打者側を9.1ポイント上回る背景には、捕手がミットで球を受けた位置を体で知っているという事情がある。ただし今季の記録は、その優位がイニングによって大きく変わることを示している。
| イニング | 守備側の成功率 | 打者側の成功率 | 差 |
|---|---|---|---|
| 1回 | 67.8%(603回) | 51.3%(429回) | 16.5ポイント |
| 2回 | 68.6%(555回) | 53.9%(382回) | 14.7ポイント |
| 3回 | 63.9%(607回) | 52.3%(440回) | 11.6ポイント |
| 6回 | 55.5%(695回) | 51.8%(539回) | 3.7ポイント |
| 8回 | 52.0%(669回) | 41.7%(612回) | 10.3ポイント |
| 9回 | 42.3%(710回) | 38.6%(656回) | 3.7ポイント |

序盤の捕手は3回に2回以上の確率で判定を覆している。1回と2回の守備側は申告そのものが少なく、確信のある球だけを選んで申告している姿が数字に出る。9回になると申告数は全イニングで最多の710回に増える一方、成功率は42.3%まで落ちた。「後ろに取っておく意味がなくなった権利を使い切る」申告が増えるからだ。
カウント別でも、捕手の優位は追い込んだ場面でこそ大きい。
| カウント | 守備側の成功率 | 打者側の成功率 |
|---|---|---|
| 2ストライク | 52.0%(1,791回) | 39.9%(1,619回) |
| 3ボール | 45.5%(797回) | 42.2%(768回) |
| その他 | 61.7%(3,698回) | 53.9%(2,873回) |
2ストライクからの申告は、守備側が覆せば三振が生まれ、打者側が覆せば三振が消える。ここで12.1ポイントの差がついている。今季、守備側の申告でボール判定が「ストライク3」に変わった件数は931件、ボール4が取り消された件数は363件だった(DiamondStats独自集計)。
捕手と打者の成功率の差がどこから来るかについては、9月上旬時点の集計をABSチャレンジ9000件突破|捕手58%と打者49%の差をデータ検証で扱った。今回の確定値は、そのときの傾向がシーズン終了までほぼ変わらなかったことを示している。
スティーブンソンが136回中93回 覆した数は全捕手2位
レッズの守備側136回の内訳は、タイラー・スティーブンソンが93回、ホセ・トレビーノが29回、P.J.ヒギンズが9回、ウィル・バンフィールドが5回。正捕手のスティーブンソンが7割近くを担った。
申告75回以上の捕手33人を成功率で並べると、スティーブンソンは3位。覆した絶対数の93回は、185回申告して105回覆したブルワーズのウィリアム・コントレラスに次ぐ2位だった。
| 順位 | 捕手(球団) | 覆った数/申告数 | 成功率 | 生んだ三振 | 消した四球 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1 | J.T.リアルミュート(フィリーズ) | 70/86回 | 81.4% | 17 | 6 |
| 2 | カーソン・ケリー(カブス) | 64/93回 | 68.8% | 20 | 8 |
| 3 | タイラー・スティーブンソン(レッズ) | 93/136回 | 68.4% | 21 | 7 |
| 4 | ハンター・グッドマン(ロッキーズ) | 77/113回 | 68.1% | 24 | 6 |
| 5 | ディロン・ディングラー(タイガース) | 71/108回 | 65.7% | 19 | 6 |
| 6 | ジョナ・ハイム(ブレーブス) | 65/100回 | 65.0% | 26 | 9 |
| 7 | ミゲル・アマヤ(カブス) | 49/76回 | 64.5% | 8 | 1 |
| 8 | ジョー・マック(マーリンズ) | 75/118回 | 63.6% | 25 | 6 |
| 9 | オースティン・ウェルズ(ヤンキース) | 82/131回 | 62.6% | 24 | 10 |
| 10 | アレハンドロ・カーク(ブルージェイズ) | 60/97回 | 61.9% | 14 | 5 |
リアルミュートの81.4%は突出しているが、申告は86回にとどまる。スティーブンソンは申告136回と上位10人で2番目に多く申告しながら、成功率を68.4%に保った。「数も精度も」を両立した捕手は、今季ではスティーブンソンとコントレラス(56.8%)、ウェルズ(62.6%)くらいしかいない。
スティーブンソンの守備イニングは921回1/3(116試合)。100球あたりの申告は2.4回で、リアルミュート(1.5回)より積極的に申告している。レッズの捕手側68.0%は、正捕手が多く申告しながら外さなかったことで作られた数字だ。
打者側でも、レッズのサル・スチュワートが51回申告して28回を覆し、申告数はメジャーの打者で最多だった。成功率54.9%は打者側の平均48.9%を上回る。捕手が守備側で、若い打者が攻撃側で、それぞれ平均を上回ったのがレッズの1位だった。
DiamondStats編集部の独自視点!
レッズの1位でいちばん注目したいのは、守備側68.0%と打者側54.1%の「どちらも上位」です。捕手の目利きだけで勝ち取った順位なら、捕手が替わった来季には消えてしまう。しかし打者側も5位に入っているということは、申告の判断が球団として共有されていた可能性が高い。スティーブンソンは今オフ契約の行方が注目される捕手で、もし移籍が実現すれば「捕手側の68.0%がどこまで残るか」が来季のレッズを測る物差しになります。
もう1つ、守備側の成功率が1回の67.8%から9回の42.3%まで25ポイント以上落ちる形は、来季に向けた球団の宿題です。9回の申告710回は全イニングで最多なのに成功率は最低。権利を余らせて負けるくらいなら使う、という判断は分かりますが、6回以降に成功率が落ち始める捕手は「残しておく」より「中盤で使う」方が得点換算では得になる。1年目のデータが示したいちばん実用的な教訓は、ここにあると思っています。
よくある質問
Q. ABSチャレンジで2026年に最も成功率が高かった球団は?
レッズで、370回の申告のうち228回を覆し、成功率61.6%でした。2位はアスレチックスの60.3%、3位はダイヤモンドバックスの59.7%です。最下位はパイレーツの47.0%でした。
Q. 捕手と打者ではどちらがABSチャレンジに成功しやすい?
捕手を含む守備側の成功率が58.0%、打者側が48.9%で、守備側が9.1ポイント高い結果でした。差は序盤のイニングで大きく、1回では16.5ポイント、9回では3.7ポイントまで縮まります。
Q. ABSチャレンジの成功率が最も高かった捕手は?
申告75回以上では、フィリーズのJ.T.リアルミュートが86回中70回を覆して81.4%で1位でした。覆した数が最も多かったのはブルワーズのウィリアム・コントレラスの105回(185回申告)です。
Q. ABSチャレンジは1試合に何回まで使える?
各球団に1試合2回の権利があります。成功すると権利は減らず、失敗すると1回消えます。延長に入る時点で権利が0回の球団には1回が追加されます。申告できるのは打者・捕手・投手だけで、監督はできません。
まとめ
- 2026年レギュラーシーズンのABSチャレンジは10,557回、覆ったのは5,686回で成功率53.9%
- レッズは370回中228回を覆し成功率61.6%で30球団1位。得点換算の差し引き16.8点も1位
- レッズの土台は守備側68.0%(2位)と打者側54.1%(5位)の両立。両方で5位以内は唯一
- 守備側の成功率は1回の67.8%から9回の42.3%まで落ちる。捕手の優位は序盤と2ストライクの場面で大きい
- スティーブンソンは136回中93回を覆し、覆した数は全捕手2位、成功率は75回以上の捕手で3位
ポストシーズンに入ってからの成功率の変化は、ドジャースがABSチャレンジ6回中2回成功 ポストシーズン成功率59%との差をデータ検証で続けて追っている。データはMLB公式Statsを独自に集計した。
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