現地10月15日、サンディエゴ・パドレスが大阪産業大学の準硬式野球部に所属する3年生の右腕、野上龍哉投手とマイナー契約を結んだ。MLB公式Statsの取引記録に「パドレスが右腕タツヤ・ノガミとマイナー契約」と公示されている。報道では、今秋に準硬式史上最速の155キロを計測し、複数の球団のスカウトが視察していたとされる。
DiamondStats(ダイヤモンドスタッツ)が注目するのは選手個人ではなく、NPBドラフトを経ずに米球団と契約する「直メジャー」という道そのものだ。この道を選んだ日本のアマチュア選手は、今回で6人目になる。過去5人はどこまで登ったのか。公式の記録で確かめた。
DiamondStatsの独自検証で分かったこと:直メジャー組の過去5人のうち、メジャーの試合に出たのは3人(60%)。ただし3人とも初出場時の年齢は21歳以上で、16歳と18歳で渡った2人はまだ到達していない。20歳で契約した今回の右腕は、ちょうどその境目にいる。
25歳ルールで「マイナー契約しか結べない」制度の中身
今回の契約がマイナー契約になったのは、球団の評価が低いからではない。MLBの制度上、そうならざるを得ない。

| 日付 | 相手 | 球場 | スコア(パドレス-相手) | 結果 |
|---|---|---|---|---|
| 09/17 | ロッキーズ | 敵地 | 9-2 | 勝ち |
| 09/18 | マーリンズ | 本拠地 | 8-2 | 勝ち |
| 09/19 | マーリンズ | 本拠地 | 7-6 | 勝ち |
| 09/20 | マーリンズ | 本拠地 | 7-3 | 勝ち |
| 09/22 | ドジャース | 敵地 | 0-7 | 負け |
| 09/23 | ドジャース | 敵地 | 5-1 | 勝ち |
| 09/24 | ドジャース | 敵地 | 4-2 | 勝ち |
| 09/25 | Dバックス | 本拠地 | 4-11 | 負け |
| 09/26 | Dバックス | 本拠地 | 10-7 | 勝ち |
| 09/27 | Dバックス | 本拠地 | 9-4 | 勝ち |
MLBの国際アマチュア選手契約の決まりでは、25歳以上で、かつMLBが認める海外プロリーグで6シーズン以上プレーした選手だけが制限なしの契約を結べる。この2つを満たさない選手は国際アマチュア扱いになり、各球団に割り当てられたボーナスプール(契約金の上限枠)の中でマイナー契約を結ぶ。
| 項目 | 2026年の決まり(MLB.com) |
|---|---|
| 契約できる期間 | 1月15日〜12月15日 |
| 年齢の条件 | 契約時に16歳以上 |
| 制限を外れる条件 | 25歳以上かつ海外プロ6シーズン以上 |
| ボーナスプールに数えない額 | 1万ドル(約150万円)以下の契約金 |
| パドレスのプール総額 | 約8億9000万円(594万ドル) |
| 最大のプール(7球団) | 約12億円(803万4900ドル) |
| 最小のプール(4球団) | 約8億2000万円(544万ドル) |
円換算は1ドル150円で計算した。パドレスのプールは30球団を5段階に分けた中で上から4段目にあたり、レッドソックス・ブルージェイズと同じ額だ。大学生の契約金は報道でも出ていないため、プールのどれだけを使ったかは現時点では確認できない。
今季のパドレスはポストシーズンに進んだ球団でもある。その戦いぶりはパドレスが2連勝でワイルドカード突破の記事でまとめている。
直メジャー過去5人の到達記録|3人がメジャーに立った
NPBを経ずに日本のアマチュアから米球団と契約した選手を、MLB公式Statsの選手登録と取引記録でさかのぼった。加藤豪将や西田陸浮のように米国の学校からMLBドラフトで指名された選手は、別の道なので数えていない。
| 選手 | 契約先 | 契約(公式記録) | メジャー初出場 | 初出場時の年齢 | 結果 |
|---|---|---|---|---|---|
| マック鈴木 | マリナーズ | 1990年代前半(記録前) | 1996年7月7日 | 21歳1か月 | 到達 |
| 多田野数人 | インディアンス | 2003年(記録前) | 2004年4月27日 | 24歳0か月 | 到達 |
| 田澤純一 | レッドソックス | 2008年12月4日 | 2009年8月7日 | 23歳2か月 | 到達 |
| 結城海斗 | ロイヤルズ | 2018年7月8日 | なし | – | 2021年6月13日に放出 |
| 森井翔太郎 | アスレチックス | 2025年1月15日 | なし | – | 1Aでプレー中 |
| 野上龍哉 | パドレス | 2026年10月15日 | – | – | 契約直後 |
到達は5人中3人、60%(DiamondStats調べ)。契約から初出場までの日数が公式記録でたどれるのは田澤純一だけで、契約から246日でメジャーのマウンドに立っている。これは日本人の直メジャー組で最速だ。
公式の取引記録で「マイナー契約」の文言が付いていないのも田澤純一だけで、報道どおりメジャー契約だったことと合う。ほかの4人はすべてマイナー契約で、今回の右腕も同じ入り口から始まる。
契約時の年齢で分かれた明暗|初出場が21歳以上の3人は全員が到達
5人を「契約した年齢」で並べ直すと、はっきりした線が見える。
| 選手 | 契約時の年齢 | 到達 |
|---|---|---|
| 結城海斗 | 16歳1か月 | なし(3年後に放出) |
| 森井翔太郎 | 18歳1か月 | まだ(2年目) |
| 野上龍哉 | 20歳9か月 | これから |
| マック鈴木 | 10代後半(記録前) | 21歳で到達 |
| 田澤純一 | 22歳5か月 | 23歳で到達 |
| 多田野数人 | 22歳(記録前) | 24歳で到達 |
到達した3人は、いずれも21歳以降にメジャーで投げ始めた投手だった。高校を出た直後の16歳・18歳で渡った2人は、まだ結果が出ていない。大学3年生の20歳で入る今回の右腕は、年齢の上では到達組に近い側にいる。
契約時の年齢と到達の関係を、森井翔太郎の現在地で確かめておく。10月16日現在、2026年は1Aストックトンで63試合に出て打率.227、本塁打4、OPS.694(MLB公式Stats)。2025年のルーキーリーグでは43試合で打率.258、OPS.783だった。19歳のシーズンに1Aで戦っているのは順当な進み方で、メジャーまではまだ3段階ある。
結城海斗は2018年に16歳で契約し、2019年にルーキーリーグへ配属された後、2021年6月に放出された。公式記録に残る在籍は3年弱だ。
到達した3人のメジャー成績|田澤純一の388試合が突出
直メジャー組の「上限」を知るため、メジャーに立った3人の通算成績を並べた。
| 選手 | 登板 | 勝敗 | 防御率 | 投球回 | 奪三振 | ホールド |
|---|---|---|---|---|---|---|
| マック鈴木 | 117 | 16勝31敗 | 5.72 | 465回2/3 | 327 | 1 |
| 多田野数人 | 15 | 1勝1敗 | 4.47 | 54回1/3 | 40 | 0 |
| 田澤純一 | 388 | 21勝26敗 | 4.12 | 395回1/3 | 374 | 89 |
田澤純一は2013年に71試合で25ホールド、防御率3.16。レッドソックスの中継ぎとしてワールドシリーズを制した年の主力だった。登板数388は、3人の合計520試合のうち75%を占める。マック鈴木は先発67試合を含む117試合で、投球回では3人の中で最も多い。
今回の右腕は身長191センチ、体重86キロ(MLB公式Statsの登録値)の右腕で、タイプとしては田澤純一と同じ「速球で押す右の投手」になる。ただし今季の実戦はまだ無く、数字はこれから積み上がる。
ポストシーズンでも力を見せた球団は他にもある。今季103勝で球団史上初のメジャー最高勝率を記録したブルワーズについてはブルワーズが最高勝率103勝の球団史上初シーズンで詳しくまとめた。
DiamondStats編集部の独自視点!
直メジャーの話になると「成功か失敗か」で語られがちだが、数字を並べて見えてきたのは入り口の年齢だった。16歳と18歳で渡った2人はまだ到達しておらず、21歳以上で初出場した3人は全員が到達している。この差は才能ではなく、育成に使える時間と、体ができる前に渡米するかどうかの違いだと編集部は考えている。
準硬式という、硬式の大学野球より注目度の低い舞台から155キロが出て、球団が動いた。これはスカウトの網が「どの連盟に所属しているか」ではなく「どんな球を投げるか」で張られていることを示す出来事だ。来季、1Aか高校生リーグ級のどこで始まるのか、最初の配属先を見れば球団の評価がそのまま読める。配属が決まった時点で、森井翔太郎の2025年と同じ土俵で比べていきたい。
まとめ
- 現地10月15日、パドレスが大阪産業大学準硬式の3年生右腕とマイナー契約(MLB公式Statsの取引記録)
- 25歳未満のためMLBの国際アマチュア扱いで、マイナー契約が制度上の決まり。パドレスの2026年ボーナスプールは約8億9000万円で30球団の上から4段目
- 直メジャー組は今回で6人目。過去5人のうちメジャー到達は3人(60%)
- 契約から初出場まで公式記録でたどれるのは田澤純一の246日だけ。到達した3人は全員21歳以降の初出場
- 16歳の結城海斗は3年で放出、18歳の森井翔太郎は2年目で1A。20歳の今回の右腕は到達組に近い年齢で入る
データはMLB公式Statsを独自に集計した。パドレスの今季の戦いは上で紹介した記事とあわせて読むと、この契約が強い球団の底上げ策であることが見えてくる。
よくある質問
Q. 直メジャーとは何ですか?
NPBのドラフトを経ずに、日本のアマチュア選手が直接MLB球団と契約することを指す。公式の制度名ではなく、NPBを飛ばしてメジャーを目指すという意味の呼び方だ。
Q. 大学生なのにメジャー契約ではなくマイナー契約なのはどうしてですか?
MLBの決まりで、25歳以上かつ海外プロリーグで6シーズン以上の経験がある選手でなければ国際アマチュア扱いになる。アマチュア扱いの選手は各球団のボーナスプールの中でマイナー契約を結ぶ。
Q. 直メジャーでメジャーに到達した日本人は何人いますか?
日本のアマチュアから直接契約した5人のうち、マック鈴木、多田野数人、田澤純一の3人がメジャーの試合に出ている。米国の学校からドラフト指名された加藤豪将、西田陸浮は別の道になる。
Q. 直メジャー組で最速でメジャーに上がったのは誰ですか?
公式の取引記録で契約日がたどれる中では田澤純一で、2008年12月4日の契約から246日後の2009年8月7日に初登板した。
Q. 直メジャーで契約した後、日本のプロ野球に戻れますか?
2020年までは「田澤ルール」と呼ばれる申し合わせで、高校出身者は3年、大学・社会人出身者は2年の間ドラフト対象外とされていた。この申し合わせは2020年に撤廃され、現在はNPBのドラフトを経れば日本球界に入れる。
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