レギュラーシーズンが終わり、新人王の投票結果を待つ10月。ナショナル・リーグの候補として名前が挙がるのはレッズのサル・スチュワート、カージナルスのJJ・ウェザーホルト、メッツのノーラン・マクリーンが中心で、ロッキーズの一塁手TJ・ラムフィールドは「4番手」の扱いにとどまっている。ところが最終成績を並べると、ラムフィールドの出塁率.390は新人の中だけでなく、ナショナル・リーグの規定打席到達者68人の中でも1位だった(10月16日現在、MLB公式Stats)。
DiamondStats(ダイヤモンドスタッツ)が注目するのは、この「1位」が本塁打や打点のように目に入りやすい数字ではなく、四球と三振の少なさという地味な土台の上に立っている点だ。新人王の投票で埋もれがちな理由と、数字の上でどこが特別かを順に見る。
出塁率.390はナ・リーグ68人の頂点 ハーパーも大谷も下
ナショナル・リーグの規定打席到達者を出塁率で並べると、ラムフィールドが最上位に立つ。2位との差はわずか1厘で、3位までが.388以上に並ぶ接戦だった。

| 順位 | 選手 | 球団 | 出塁率 | 打率 | OPS |
|---|---|---|---|---|---|
| 1 | TJ・ラムフィールド | ロッキーズ | .390 | .300 | .843 |
| 2 | ジェイク・バウアーズ | ブルワーズ | .389 | .266 | .873 |
| 3 | ジェームズ・ウッド | ナショナルズ | .388 | .265 | .891 |
| 4 | ガブリエル・モレノ | ダイヤモンドバックス | .388 | .311 | .874 |
| 5 | ブライス・ハーパー | フィリーズ | .380 | .269 | .865 |
| 6 | 大谷翔平 | ドジャース | .377 | .275 | .889 |
| 7 | ピート・クロウ=アームストロング | カブス | .372 | .280 | .942 |
| 8 | ヘラルド・ペルドモ | ダイヤモンドバックス | .370 | .262 | .747 |
| 9 | 鈴木誠也 | カブス | .368 | .270 | .841 |
| 10 | ニック・ゴンザレス | パイレーツ | .367 | .303 | .755 |
メジャー全体でもアストロズのヨルダン・アルバレス(.432)に次ぐ2位。ロッキーズは球団の公式発信で「新人がナショナル・リーグの出塁率で1位になるのはおよそ100年ぶり」と伝えている。
出塁率の高さを支えているのが、四球と三振のバランスだ。631打席で四球72、三振86。四球率11.4%はナショナル・リーグの規定到達者68人中19位、三振率13.6%は少ない方から8位に入る。ルイス・アラエスやニコ・ホーナーのような「三振しない打者」の群れに、新人が1年目から入り込んだ形になる。出塁率という指標の読み方は打率・OPS・出塁率の解説記事で詳しくまとめている。
新人王候補4人との比較 長打で負けて出塁で勝つ
ナショナル・リーグの新人で規定打席に到達した野手は4人だけ。その4人に、107試合で17本塁打を打ったジャイアンツのブライス・エルドリッジを加えて並べる。
| 選手 | 球団 | 試合 | 打率 | 出塁率 | OPS | 本塁打 | 打点 | 得点 | 四球 | 三振 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| TJ・ラムフィールド | ロッキーズ | 155 | .300 | .390 | .843 | 16 | 73 | 67 | 72 | 86 |
| サル・スチュワート | レッズ | 162 | .263 | .330 | .787 | 32 | 112 | 87 | 63 | 155 |
| カーソン・ベンジ | メッツ | 156 | .282 | .346 | .776 | 20 | 65 | 86 | 50 | 142 |
| JJ・ウェザーホルト | カージナルス | 139 | .242 | .339 | .704 | 17 | 51 | 89 | 64 | 104 |
| ブライス・エルドリッジ | ジャイアンツ | 107 | .269 | .364 | .825 | 17 | 57 | 50 | 59 | 119 |
本塁打32本と打点112で新人トップに立つサル・スチュワートの数字は、投票者の目に真っ先に入る。ラムフィールドの本塁打16本は新人6位にすぎない。一方で打率・出塁率・OPSの3つは5人の中で最上位、二塁打30本と四球72も新人1位、安打164はベンジの168に次ぐ2位だった。
投手ではノーラン・マクリーンが31先発で179回2/3、防御率3.16、194奪三振とメッツの先発の柱になった。打者で「本塁打と打点」、投手で「奪三振」という分かりやすい看板を持つ候補が並ぶ中、ラムフィールドの看板は「出塁」だけ。これが票の少なさに直結している。候補全体の構図は新人王をア・ナ両リーグで比べた記事で追っている。
クアーズ・フィールドの効果を外しても出塁率は下がらない
ロッキーズの打者につきまとうのが「本拠地の標高のおかげ」という見方だ。本拠地と敵地に分けて確かめた。
| 区分 | 試合 | 打率 | 出塁率 | 長打率 | OPS | 本塁打 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 本拠地 | 79 | .304 | .385 | .479 | .864 | 10 |
| 敵地 | 76 | .295 | .395 | .425 | .820 | 6 |
本塁打と長打率は本拠地が上回るが、出塁率は敵地の方が高い。本拠地で四球32だったのに対し、敵地では四球40。ボールを見極めて塁に出る技術は球場を選ばなかった。打率も敵地で.295を残し、本拠地との差は9厘にとどまる。
月ごとの出塁率 春の.331から9月の.432へ
開幕直後は苦しんだ。3・4月を合わせた32試合は打率.263、出塁率.331、本塁打3本。そこから5月以降は一度も出塁率.370を割っていない。

| 月 | 試合 | 打率 | 出塁率 | OPS | 本塁打 |
|---|---|---|---|---|---|
| 3・4月 | 32 | .263 | .331 | .656 | 3 |
| 5月 | 25 | .310 | .400 | .883 | 4 |
| 6月 | 26 | .316 | .400 | .989 | 5 |
| 7月 | 24 | .289 | .379 | .752 | 1 |
| 8月 | 27 | .278 | .414 | .736 | 0 |
| 9月 | 21 | .359 | .432 | .983 | 3 |
8月は本塁打0本で打率も.278まで落ちたが、四球19で出塁率.414を保った。打てない月でも塁に出続けたことが、年間.390の土台になっている。DiamondStats調べで162試合に換算すると安打171本、二塁打31本、四球75個のペースだった。
歴代の新人王と比べる 出塁率.390は直近4人の受賞者の誰より上
ナショナル・リーグで直近に新人王を取った野手の1年目と比べる。2024年は投手のポール・スキーンズが受賞したため除いた。
| 年 | 選手 | 球団 | 出塁率 | OPS | 本塁打 |
|---|---|---|---|---|---|
| 2021 | ジョナサン・インディア | レッズ | .376 | .835 | 21 |
| 2022 | マイケル・ハリス2世 | ブレーブス | .339 | .853 | 19 |
| 2023 | コービン・キャロル | ダイヤモンドバックス | .362 | .868 | 25 |
| 2025 | ドレイク・ボールドウィン | ブレーブス | .341 | .810 | 19 |
| 2026 | TJ・ラムフィールド | ロッキーズ | .390 | .843 | 16 |
出塁率では4人の受賞者の誰より高い。OPSはキャロルとハリスに届かないが、インディアとボールドウィンは上回る。ロッキーズの一塁手として比べるなら、トッド・ヘルトンの1998年(出塁率.380、OPS.910、25本塁打)が目安になる。出塁率だけなら、球団の殿堂入り選手の新人時代をも超えた。
DiamondStats編集部の独自視点!
新人王の投票は、58勝104敗で地区最下位に沈んだロッキーズの選手には追い風が吹かない。それでも編集部が目を留めるのは、ラムフィールドの数字が「ロッキーズの打者にありがちな本拠地頼み」の型にはまっていない点だ。敵地で出塁率.395を残す新人は、来季以降も数字が崩れにくい。
もうひとつの注目点は長打の伸びしろだ。二塁打30本に対して本塁打16本。この二塁打のうち何本が来季フェンスを越えるかで、評価はまるで変わる。新人王の結果がどうであれ、2027年の春に最初に数字を追いたい打者の1人に挙げておく。
よくある質問
Q. TJ・ラムフィールドの2026年の成績は?
155試合で打率.300、出塁率.390、長打率.453、OPS.843、16本塁打、73打点、72四球、86三振(10月16日現在、MLB公式Stats)。出塁率はナショナル・リーグの規定打席到達者で1位、メジャー全体で2位だった。
Q. ラムフィールドはクアーズ・フィールドのおかげで数字が良いのか?
出塁率は本拠地.385に対して敵地.395で、敵地の方が高い。本塁打と長打率は本拠地が上だが、塁に出る力は球場に左右されていない。
Q. ナショナル・リーグ新人王の有力候補は誰か?
打者ではレッズのサル・スチュワート(32本塁打、112打点)、カージナルスのJJ・ウェザーホルト(89得点)、メッツのカーソン・ベンジ(168安打)、投手ではメッツのノーラン・マクリーン(防御率3.16、194奪三振)が候補に挙がる。ラムフィールドは出塁率と打率で新人1位だが、本塁打は新人6位。
Q. 新人が出塁率でリーグ1位になるのは珍しいのか?
ロッキーズの公式発信では、ナショナル・リーグの新人が出塁率1位になるのはおよそ100年ぶりとされる。直近に新人王を取った野手4人の出塁率は.339から.376で、.390はその誰より高い。
まとめ
ラムフィールドは本塁打16本という数字のせいで新人王の本命から外れているが、出塁率.390はナショナル・リーグの全打者の頂点で、敵地でも月ごとでも崩れなかった。四球72と三振86のバランスは1年目の打者として異例の水準にある。新人王の票がどこへ流れるにせよ、2026年のナショナル・リーグで最も塁に出た打者が新人だったという事実は、記録として残り続ける。
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