ABSチャレンジ(ロボット審判への異議申し立て)が導入された1年目、2026年のレギュラーシーズン全体の総括が出ました。球審ごとの「覆り率」の差は、最も高い人と低い人で24.2ポイントありました。
DiamondStats(ダイヤモンドスタッツ)が、MLB公式Statsの全2430試合(3月25日〜9月27日)のデータを1球ずつ集計しました。チャレンジは10,557回で、そのうち5,685回(53.9%)で判定が覆っています。チャレンジを100回以上受けた球審は75人いて、覆り率はアンディ・フレッチャーの66.4%(122回中81回)からジャンセン・ビスコンティの42.2%(102回中43回)まで開きました。
球審別の覆り率 トップ10とワースト5
対象は、球審として受けたチャレンジが100回以上の75人です(レギュラーシーズン終了時点)。
| 順位 | 球審 | 球審試合 | 被チャレンジ | 覆り | 覆り率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1 | アンディ・フレッチャー | 24 | 122 | 81 | 66.4% |
| 2 | ロブ・ドレイク | 31 | 127 | 82 | 64.6% |
| 3 | エイドリアン・ジョンソン | 22 | 114 | 73 | 64.0% |
| 4 | コリー・ブレイザー | 28 | 127 | 81 | 63.8% |
| 5 | マイク・エスタブルック | 29 | 139 | 86 | 61.9% |
| 6 | マニー・ゴンザレス | 29 | 135 | 83 | 61.5% |
| 7 | ビル・ミラー | 29 | 135 | 82 | 60.7% |
| 8 | クリス・シーガル | 28 | 132 | 80 | 60.6% |
| 9 | ダン・イアソグナ | 30 | 149 | 90 | 60.4% |
| 10 | チャーリー・ラモス | 24 | 123 | 74 | 60.2% |
| 順位 | 球審 | 球審試合 | 被チャレンジ | 覆り | 覆り率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 71 | ネスター・セハ | 32 | 133 | 62 | 46.6% |
| 72 | ジェームズ・ジーン | 27 | 103 | 47 | 45.6% |
| 73 | ライアン・アディトン | 30 | 140 | 63 | 45.0% |
| 74 | マーク・リッパーガー | 31 | 131 | 58 | 44.3% |
| 75 | ジャンセン・ビスコンティ | 28 | 102 | 43 | 42.2% |

1位と2位の差は1.8ポイントです。6位から10位は60%台の前半に固まっています。75人の真ん中は53.7%で、リーグ全体の53.9%とほぼ同じです。
覆り率が低い球審は、選手が「おかしい」と感じて申し立てた判定でも、機械の判定と一致していることが多かったということです。
覆り率だけでは分からない「1000球あたりの覆り数」
覆り率は「申し立てられた判定のうち何割が覆ったか」です。そもそも何回申し立てられたか(被チャレンジ率)も合わせて見ると、差はもっと大きくなります。
| 項目 | フレッチャー | ビスコンティ | リーグ全体 |
|---|---|---|---|
| ボール・ストライクの判定球数 | 3,737 | 4,160 | 371,584 |
| 判定100球あたりのチャレンジ | 3.26回 | 2.45回 | 2.84回 |
| 覆り率 | 66.4% | 42.2% | 53.9% |
| 判定1000球あたりの覆り | 21.7回 | 10.3回 | 15.3回 |
| 1試合あたりの覆り | 3.38回 | 1.54回 | 2.34回 |

(DiamondStats独自集計。1試合あたりの覆りは両チームの合計)
判定1000球あたりで比べると、フレッチャーはビスコンティの約2.1倍、判定が覆りました。75人の被チャレンジ率と覆り率の相関係数は0.53です。よく申し立てられる球審ほど覆る割合も高いという傾向があり、選手が球審ごとの「外し方」を感じ取って申し立てていることがうかがえます。
被チャレンジが最も多かったのはハンター・ウェンデルステッドで、167回(判定100球あたり3.71回)でした。
球団ごとの成功率の差は、レッズがABSチャレンジ成功率62%で30球団1位になった記事でまとめています。
打者の申し立てと守備側の申し立てで分けると
打者が申し立てられるのはストライク判定だけで、捕手・投手が申し立てられるのはボール判定だけです。どちらを分けて見ると、球審の「くせ」が分かれます。
| 区分 | 打者の申し立て(ストライク判定) | 守備側の申し立て(ボール判定) |
|---|---|---|
| リーグ全体 | 48.8%(4,766回中2,328回) | 58.0%(5,791回中3,357回) |
| フレッチャー | 61.8%(55回中34回) | 70.1%(67回中47回) |
| ビスコンティ | 38.1%(42回中16回) | 45.0%(60回中27回) |
| 打者側の最高 | ダグ・エディングス 69.8%(63回中44回) | ― |
| 打者側の最低 | ライアン・アディトン 29.4%(51回中15回) | ― |
| 守備側の最高 | ― | エイドリアン・ジョンソン 74.2%(66回中49回) |
| 守備側の最低 | ― | エミル・ヒメネス 44.6%(74回中33回) |
アディトンは全体の覆り率で73位ですが、守備側の申し立てでは53.9%(89回中48回)とリーグ並みです。打者への「ストライクの取りすぎ」が少ない球審と言えます。
捕手個人の成功率は、JT・リアルミュートのABSチャレンジ初年度の記事でまとめています。
DiamondStats編集部の独自視点!
覆り率が低いことは、そのまま「判定がうまい」という意味にはなりません。ビスコンティは判定100球あたりのチャレンジが2.45回とリーグ平均より少なく、そのうえ申し立てられても機械の判定と一致していました。2つの数字がどちらも良い、珍しい球審です。
逆にフレッチャーやジョンソンの試合では、守備側のボール判定への申し立てが7割前後で覆っています。2027年は、こうした球審の試合で捕手がチャレンジの残り回数をどう使うかに注目しています。
ABS導入で捕手のフレーミング(ミットの動きでストライクに見せる技術)の価値がどう変わったかは、フレーミング価値が2割減った記事で比べています。
まとめ
- 2026年のABSチャレンジは10,557回で、そのうち5,685回(53.9%)で判定が覆った
- 100回以上申し立てを受けた球審75人の覆り率は42.2%〜66.4%で、差は24.2ポイント
- 判定1000球あたりの覆りは10.3回〜21.7回で、約2.1倍の差
- 打者の申し立ては48.8%、守備側は58.0%が覆った
データはMLB公式Statsを独自に集計しています(球審はその試合の公式記録の球審)。
よくある質問
Q. ABSチャレンジで判定が覆った割合は?
2026年のレギュラーシーズンは10,557回中5,685回で、53.9%です(DiamondStats集計)。
Q. 覆り率が最も高かった球審は誰?
100回以上申し立てを受けた75人の中では、アンディ・フレッチャーの66.4%(122回中81回)です。
Q. 覆り率が最も低かった球審は誰?
ジャンセン・ビスコンティの42.2%(102回中43回)です。
Q. 打者と捕手ではどちらの申し立てがよく通る?
守備側(捕手・投手)が58.0%、打者が48.8%で、守備側の申し立ての方がよく通りました。
文:DiamondStats 分析チーム(MLBデータ分析担当)|データ出典:MLB公式Stats(2026年10月時点)







